エアコンのモデリング(その1) 〜エアコンの作動原理を理解する〜:1Dモデリングの勘所(20)(1/5 ページ)
「1Dモデリング」に関する連載。連載第20回は、外観からその機能を理解することが難しい製品の代表例としてエアコンを取り上げる。具体的にエアコンのモデリングを試みる前に、エアコンの動作原理について熱力学の基本に立ち返って考える。
これまで、いくつかの身近な製品のモデリングを試みた。ランドリー(洗濯機)、「ミニ四駆」(注1)、クリーナー(掃除機)、スピーカー、エレベーターを扱ったが、これらはいずれもその外観から機能と構造を比較的容易に理解することが可能で、モデリングも直感的に行えた。
一方、これらの製品とは異なり、外観からその機能を理解することが難しい製品も多い。今回は、その代表例としてエアコン(エアコンディショナー)を取り上げる。このような場合、対象とする製品の原理を理解することから始める必要がある。そこで、まずはエアコンの動作原理について、熱力学の基本に立ち返って考えることにする。この結果を受けて、次回、具体的にエアコンのモデリングを試みる。
※注1:「ミニ四駆」は株式会社タミヤの登録商標です。
エアコンの構成と原理
図1にエアコンの外観を示す。部屋の中に設置されているのが室内機で、屋外に設置されているのが室外機である。室外機と室内機は行きと帰りの2本のパイプでつながっている。パイプの内部には「冷媒」と呼ばれる流体が注入されており、この冷媒が室外機と室内機を循環しながら、「相変化」(液体→気体→液体)することにより、エアコンとしての機能を実現している。相変化とは、物質の物理的特徴が、ある形態から別の形態に変わる際に、エネルギーの移動が温度の変化をもたらさない状態を呼ぶ。なお、昔はエアコンといえば冷房専用であったが、現在は冷暖房ができるものをエアコンと呼ぶことが多い。
図2にエアコンの原理を示す。エアコンは大きく圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器からなる。膨張弁で減圧された冷媒は蒸発器で相対的に温度の高い空気により蒸発する(液相→気相)。次に、圧縮機で高圧にされ、凝縮器で相対的に温度の低い空気により凝縮する(気相→液相)。図2に示すように、凝縮器では吸熱、凝縮器では排熱となり、暖房時には室内機が凝縮器、室外機が蒸発器に、冷房時には室内機が蒸発器、室外機が凝縮器になる。実際には、暖房時と冷房時にいちいち凝縮器と蒸発器を入れ替える必要がないようになっている。これについては次回説明する。凝縮器側は高圧、蒸発器側は低圧となっているので、相変化する温度は凝縮器側で高く、蒸発器側で低くなる。
参考文献:
- [1]カーエアコン研究会|カーエアコン:熱マネージメント・エコ技術|東京電機大学出版局(2009)
- [2]大高敏夫|絵解き「ヒートポンプ」基礎のきそ|日刊工業新聞社(2011)
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