エアコンのモデリング(その1) 〜エアコンの作動原理を理解する〜:1Dモデリングの勘所(20)(3/5 ページ)
「1Dモデリング」に関する連載。連載第20回は、外観からその機能を理解することが難しい製品の代表例としてエアコンを取り上げる。具体的にエアコンのモデリングを試みる前に、エアコンの動作原理について熱力学の基本に立ち返って考える。
気体の特殊性(振る舞い)
熱力学理解する上で、気体の性質を知っておくことは重要である(今回のエアコンのモデリングでは、あまり使用しないが)。気体をある容器に入れると、気体の体積は容器の体積そのもので、その圧力は容器の大きさの状態で決まる。今、気体が体積Vの容器に入っていて、そのときの温度をT、圧力をPとし、これらの値がどのように関係しているかを考える。この関係式を「状態方程式」という。気体の圧力が低い(低密度の)場合、状態方程式は比較的簡便に表現でき、このような気体を「理想気体」という。室温、大気圧下の気体の多くは理想気体と考えてよい。
また、ある体積の中に含まれる気体の量を、その気体の分子の個数で表現できるとよい。例えば、0.012kgの炭素12Cには、6.022×1023個の炭素原子が含まれる。この個数は物質量の単位「mol(モル)」を定め、アボガドロ数(Avogadro’s number)「NA」と呼ばれる。すなわち、
となる。物質のモル数nは、その質量mと次の関係で結ばれる。
Mは物質のモル質量[kg/mol]という。例えば、酸素分子O2のモル質量は、0.032kg/molである。1分子の質量m0は、モル質量を分子の個数(アボガドロ数)で割って、
となる。なお、物質量モル[mol]は7つあるSI基本単位の一つである。
上記の理想気体を円筒状の容器に入れ、上から可動するピストンで内部の体積を可変できるようにする。このとき、円筒には漏れがなく、気体の分子数は一定とすると、実験から以下のような事実が得られる。
- 気体の体積を一定に保つと、圧力は体積に反比例する(ボイルの法則)
- 気体の圧力を一定に保つと、体積は温度に比例する(シャルルの法則)
- 気体の体積を一定に保つと、圧力は温度に比例する(ゲイリュサックの法則)
この3つの法則を状態方程式で表現すると、
となり、「理想気体の法則」と呼ばれる。このとき、Rは「気体定数」と呼ばれ、次の値となる。
続いて、理想気体の「断熱過程」について考える。断熱過程とは、システムと環境との間で、熱によるエネルギー移動がない過程のことである。実際には完全な断熱環境の実現は難しいが、例えば、気体が急速に圧縮または膨張する場合には、熱の応答は付いていけず、実質的に断熱状態といえる。理想気体の断熱過程での圧力と体積の関係は、
となる。ここに、γは定積比熱を定圧比熱で割った値で、γ>1で、例えば酸素分子O2の場合には1.40である。
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