連載
エアコンのモデリング(その1) 〜エアコンの作動原理を理解する〜:1Dモデリングの勘所(20)(4/5 ページ)
「1Dモデリング」に関する連載。連載第20回は、外観からその機能を理解することが難しい製品の代表例としてエアコンを取り上げる。具体的にエアコンのモデリングを試みる前に、エアコンの動作原理について熱力学の基本に立ち返って考える。
カルノーサイクル
1824年にカルノーが、現在「カルノー機関」として知られている理論的な熱機関を提唱した。図5にカルノー機関の熱サイクルを示す。
カルノー機関の熱サイクルは以下の4段階からなる。ピストンの位置(A、B、C、D)の移動方向ごとに説明する。
- [A→B]:温度Thighにおける等温膨張解である。気体は温度Thighの熱源に接触しており、シリンダ底部から熱エネルギーQhighを吸収し、ピストンが上に移動する際に仕事WABを行う
- [B→C]:シリンダ底面は断熱壁で気体は断熱膨張する。この過程で温度はThighからTlowに下がり、気体はピストンが上がる際に仕事WBCを行う
- [C→D]:気体は温度Tlowの熱源に接触しており、温度Tlowで等温圧縮される。このとき、気体は熱源にQlowを放出し、ピストンは気体に対して仕事WCDを行う
- [D→A]:シリンダ底面は断熱壁で気体は断熱圧縮される。この過程で温度はTlowからThighに上がり、ピストンは気体に対して仕事WDAを行う
カルノーが示したことは、2つの熱源の間で理想的な可逆サイクルで動く熱機関は、原理的に最高の効率を有するということで、このサイクルを「カルノーサイクル」(図6左図)という。この理想的熱機関が、全ての熱機関の効率の上限を与える。カルノーサイクルを逆に回すと「逆カルノーサイクル」(図6右図)となる。カルノーサイクルと逆カルノーサイクルは、熱機関とヒートポンプに相当する。
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