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エアコンのモデリング(その1) 〜エアコンの作動原理を理解する〜1Dモデリングの勘所(20)(5/5 ページ)

「1Dモデリング」に関する連載。連載第20回は、外観からその機能を理解することが難しい製品の代表例としてエアコンを取り上げる。具体的にエアコンのモデリングを試みる前に、エアコンの動作原理について熱力学の基本に立ち返って考える。

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エアコンで使用している気液二相サイクル

 図7にエアコンで採用されている「気液二相サイクル」を示す。このように縦軸に圧力、横軸に比エンタルピー(kg当たりのエネルギー)を取った図を「モリエル線図」という。構成要素は圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器およびこれらを連結する配管からなる。内部に注入される流体を冷媒と呼ぶ。

気液二相サイクル
図7 気液二相サイクル[クリックで拡大]

 冷媒は気体の状態で圧縮機に送られ、理想的には、断熱圧縮されて高温/高圧の気体となる。次に、凝縮器で放熱するとともに冷媒は気体から液体になる。さらに、膨張弁で減圧され、低温/低圧の湿り蒸気(二相状態)となる。その後、蒸発器で吸熱して、さらに過熱蒸気となって圧縮機に戻る。圧縮機は言葉の通り、気体を圧縮して高圧にする装置であるが、気体が高圧になることにより、気体→液体の凝縮時の温度を高く設定できる。別の言い方をすると、凝縮器(暖房モードでは室内機の熱交換機)の温度をいくつに設定するかによって、圧縮機の出口圧力が決まる。同様に、蒸発器(冷房モードでは室内機の熱交換機)の温度をいくつに設定するかによって、膨張弁の出口圧力(圧縮機の入口圧力)が決まる。

 図7から分かるように、気液二相サイクルを使用したエアコンでは、外部からの仕事(圧縮機)に対して数倍の熱を授受可能で、エネルギー効率に優れている。すなわち、エアコンの効率(COP)は図7より、

  • 冷凍機として使用する場合(冷房モード):
式12
式12
  • ヒートポンプとして使用する場合(暖房モード):
式13
式13

となる。今、冷凍能力をPrefrigerator[W]、冷媒の質量流量をG[kg/s]とすると、次の関係が成り立つ。

式14
式14

 一方、圧縮機の必要パワーPは圧縮機の総合効率をηとすると、

式15
式15

となる。



 次回は「エアコンのモデリング(その2)」として、モデリングならびに性能評価方法について紹介する。 (次回へ続く

⇒連載バックナンバーはこちら

筆者プロフィール:

大富浩一(https://1dcae.jp/profile/

日本機械学会 設計研究会
本研究会では、“ものづくりをもっと良いものへ”を目指して、種々の活動を行っている。1Dモデリングはその活動の一つである。


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