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エアコンのモデリング(その2) 〜冷媒に着目してエアコンをモデリングする〜1Dモデリングの勘所(21)(1/6 ページ)

「1Dモデリング」に関する連載。連載第21回は、エアコンのモデリングに取り組む。まずはエアコンの仕組みと運転方法を確認し、熱サイクルを具体的な冷媒を参照して数値化。さらに圧縮機と熱交換機の原理に触れ、エアコンのモデリングについて説明し、計算例を示す。最後にヒートポンプ式給湯器を紹介する。

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 エアコン(エアコンディショナー)のモデリングの手始めとして、前回はエアコンの動作原理について学んだ。今回はこの結果を受けて、エアコンのモデリングに取り組む。

 最初に、エアコンの仕組みと運転方法を説明し、エアコンの心臓部ともいえる熱サイクルを具体的な冷媒を参照して数値化する。また、エアコンの主要要素である圧縮機と熱交換機の原理を述べた後、エアコンのモデリング(設計手順の定式化)について説明し、計算例を示す。最後に、エアコンと同様にヒートポンプを応用した製品として、「エコキュート」の名称で知られるヒートポンプ式給湯器を紹介する。

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エアコンの仕組みと運転方法

 図1にエアコンの仕組みと運転方法を示す。エアコンは、暖房時には室内熱交換機が凝縮器として作用し、熱を放出する。一方、冷房時には室内熱交換器が蒸発器として作用し、熱を吸収する。これを実現するためには、熱交換機の流れの方向を暖房時と冷房時で逆にする必要がある。この仕組みを機構的に実現しているのが四方弁だ。四方弁は、四方向の流路を目的に応じて切り替える弁である。これにより、圧縮機の運転方向は常に一定方向のまま、運転モードを切り替えることができる。また、圧縮機の前にはサクションカップが取り付けられている。圧縮機は気体を圧縮するように設計されており、液体や不純物が圧縮機に行かないように、これらをトラップするのが目的である。

エアコンの仕組みと運転方法
図1 エアコンの仕組みと運転方法[クリックで拡大]

 図1に示すように、サクションカップ、圧縮機、四方弁、熱交換機(室外機)、膨張弁、熱交換機(室内機)が主要要素で、室内機以外は、室外機の中に配置されている。熱交換機には熱交換用のファンが付いている。室外機には大型のプロペラファンが、室内機には横流ファンが使われている。特に、室内機においては騒音の問題があり、低騒音ファンが開発されている。

エアコンの熱サイクル

 表1に家庭用エアコンに使用される標準的な冷媒「R410A」の物性値(参考文献[1]より必要部分を転記)を示す(最近は別の冷媒が使われているようであるが)。

家庭用エアコンに使用される標準的な冷媒の物性値
表1 家庭用エアコンに使用される標準的な冷媒の物性値[クリックで拡大]

 一方、エアコンの設計手順は以下のようになっているものと考えられる。

  1. 凝縮器(高温側)、蒸発器(低音側)の温度を設定する
  2. その際の冷房能力、暖房能力を決める
  3. 1.から、ポンプの吸い込み圧力、吐出圧力を求める
  4. 2.から、冷媒の質量流量を求める
  5. 3、4.およびシステム抵抗を考慮して圧縮機を設計する
  6. 配管長、配管内径と4.の情報から、冷媒注入量を求める
  7. 2.の情報から、室内機、室外機の熱交換機の設計を行う

 上記の設計手順と、前回図7気液二相サイクルを参考に、冷媒の状態が液相、二相、気相のいずれかを判断し、密度、定圧比熱、気化熱の情報から具体的に数値を決めていく。図2に蒸発器を0℃、凝縮器を40℃とした場合の各サイクルの熱特性を、表1から転記して示す。

エアコンの熱サイクル
図2 エアコンの熱サイクル[クリックで拡大]

 このように、横軸に単位質量当りのエネルギー(比エンタルピー)、縦軸に圧力を取って熱サイクルを表現したものを「モリエル線図」という。

参考文献:

  • [1]伝熱工学資料[改訂第5版]|日本機械学会(2009)

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