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乗り心地を考慮したエレベーターのモデリング1Dモデリングの勘所(19)(1/3 ページ)

「1Dモデリング」に関する連載。連載第19回は“エレベーターの乗り心地のモデリング”を取り上げる。振動と乗り心地の関係について述べ、続いてエレベーターの仕組みと振動、ひとの振動検知部位とひとのモデリングの方法を説明し、最後にエレベーターの乗り心地のモデリングを行い、解析結果から、ひとにより乗り心地が異なることを示す。

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 前回ひとのモデリングの考え方とその方法について述べた。今回は、その適用例の1つとして“エレベーターの乗り心地のモデリング”を取り上げる。

 エレベーターなどの移動交通機器に乗った際、ひとはその動きを感じ、ある場合には気にならなかったり、また場合によっては不快に感じたりする。ここでは、これを“乗り心地”と定義する。

 乗り心地は、当然エレベーターなどの機器が起因となっているため、これらの“もののモデリング”は不可欠であるが、これらが発生する振動を感じるのは“ひと”であり、この部分は“ひとのモデリング”を必要とする。

 そこで、最初に振動と乗り心地の関係について述べ、続いてエレベーターの仕組みと振動、ひとの振動検知部位とひとのモデリングの方法を説明し、最後にエレベーターの乗り心地のモデリングを行い、この解析結果から、ひとにより乗り心地が異なることを示す。

⇒連載バックナンバーはこちら

表記について:

※1)「もの」「モノ」の表記について:本稿では、生産活動によって付加価値が与えられた成果物を表す場合は「もの」、経営学の三要素「ヒト、モノ、カネ」のように生産要素やリソースとして表す場合は「モノ」と表現する。

※2)「人」「ヒト」「ひと」の表記について:本稿では、「人:一般的」「ヒト:生物学的」「ひと:人間的(ものとの対比)」と使い分けて表記している。


振動と乗り心地

 乗り心地に関しては、クルマを中心に多くの研究がなされていて、規格化されている場合もある。図1に「Meisterの振動感覚曲線」(参考文献[1])を示す。入力として縦軸に加速度、横軸にその周波数を取り、ひとの感覚を出力として曲線で示している。

Meisterの振動感覚曲線
図1 Meisterの振動感覚曲線[クリックで拡大]

 図1では“やや不快”と“振動をはっきり感じるが不快ではない”の2つの線(オリジナルでは6つの線が示されている)を示している。ここから、乗り心地の限界曲線はこの2つの線の間にあると考えられる。すなわち、5Hzの入力に対してひとは最も敏感であることを示している。この要因はさまざまであるが、1つにはひとが一種の振動系を構成しており、ひとの共振点が5Hzに存在すると考えられる。最も単純なケースとして、ひとを一自由度のMCK(マス、減衰、ばね)モデルで考え、図の限界曲線に合致させるには、減衰比を0.2にすると都合がいい(参考文献[1])といわれている。また、図1から、ひとは3Hz付近までは加加速度(ジャーク)、5Hz前後では加速度、それ以上では速度に対して、乗り心地を敏感に感じていることが分かる。

 もう少し分かりやすく説明すると、図1の振動感覚曲線について、縦軸を速度、加速度、加加速度で表現すると図2となる。これから、比較的高い周波数を対象とする一般の機械振動(電動工具など)では、振動速度を基本に規格化されている理由が理解できる。一方、エレベーターやクルマなどにおいては、その動きが低周波であるため、加速度および加加速度も重要な評価因子となる。

振動の種類と振動感覚曲線
図2 振動の種類と振動感覚曲線[クリックで拡大]

参考文献

  • [1]景山|自動車力学|理工図書(1984)

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