乗り心地を考慮したエレベーターのモデリング:1Dモデリングの勘所(19)(3/3 ページ)
「1Dモデリング」に関する連載。連載第19回は“エレベーターの乗り心地のモデリング”を取り上げる。振動と乗り心地の関係について述べ、続いてエレベーターの仕組みと振動、ひとの振動検知部位とひとのモデリングの方法を説明し、最後にエレベーターの乗り心地のモデリングを行い、解析結果から、ひとにより乗り心地が異なることを示す。
エレベーターの乗り心地のモデリング
以上の知見を基に、ひとを考慮したエレベーターの乗り心地のモデルを考えると図7となる。
すなわち、エレベーターのカゴが巻き上げ機のモーターにより、巻き上げられる。カゴと逆側にはカウンターウエイトが取り付けられている。ロープは長さ方向に剛性を有しており、かつロープの長さは時々刻々変化するため、ロープの剛性も変化する。また、巻き上げ機も起動から停止まで非定常挙動をするため、トルク変動を生じ、これがカゴへの入力となり、カゴが振動する。カゴの床面の振動がカゴ内にいるひと(この場合は、大人の男性、女性と子供の3人)への入力となり、振動を検知することになる。なお、前述の理由により、加速、減速時の速度変化を滑らかに行うため、速度変化は正弦波状に変化するものとして定義した。図8に走行パターンを直線速度変化と対比させて示す。
そして、図7を運動方程式で表現すると下記となる。
ひとにより異なる乗り心地
図7のモデルを実際に解くと、カゴの振動特性は図9となる。図7の座標は移動座標系であるため、実際の振動はカゴ座標系の振動(左図)とカゴの絶対座標系での振動(右図)の和となる。
一方、大人の男性、女性、子供の3人が感じる振動(乗り心地)は図10となる。減速時に系の固有振動数が男性、女性の固有振動数に近くなるため、男性および女性の感じる振動は子供に比べて大きい。このように、ひとの条件(この場合は体格)によって乗り心地が異なることが分かる。
次回は、エアコンのモデリングについて紹介する。 (次回へ続く)
筆者プロフィール:
大富浩一(https://1dcae.jp/profile/)
日本機械学会 設計研究会
本研究会では、“ものづくりをもっと良いものへ”を目指して、種々の活動を行っている。1Dモデリングはその活動の一つである。
- 研究会HP:https://1dcae.jp/
- 代表者アドレス:ohtomi@1dcae.jp
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