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スピーカーのモデリング〜電気、機構、音響の連成問題、3つの現象を回路で表現〜1Dモデリングの勘所(12)(1/5 ページ)

「1Dモデリング」に関する連載。連載第12回では、スピーカーのモデリングを考える。構造/原理を確認して機能構造マップを作成し、これを基にモデリングする。その際、電気系、機構系、音響系の3つの系を回路で表現し、各系を結び付ける関係式を導出することにより、スピーカー全体系のモデリングを行い、電気系、音響系を機構系に縮約してスピーカーの伝達特性を導出する。最後に「Modelica」によるモデリング例を示す。

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 今回は“スピーカー”のモデリングについて考える。スピーカーの構造/原理に続いて、「機能構造マップ」を作成し、これを基にモデリングを行う。スピーカーは電気系、機構系、音響系から構成される。このような系のモデリング方法はさまざまであるが、今回は機構系、音響系を電気系に等価に置き換えた回路で表現する方法を採用する。この方法は一般的に「回路法」といわれている。3つの系を回路で表現し、各系を結び付ける関係式を導出することにより、スピーカー全体系のモデリングを行う。この結果を受けて、電気系、音響系を機構系に縮約してスピーカーの伝達特性を導出する。最後に、モデリング言語「Modelica」によるスピーカーのモデリング例を示す。

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スピーカーの構造と原理

 図1に、スピーカーの原理を示す。原音は電気信号に変換され、スピーカーへの入力となる。電気信号は磁気回路(ボイスコイル)を介して、機構系を振動させる。機構系の振動板が振動することによって音に変換され、これが人の聴覚によって音として認知される。スピーカーでは出力される音がいかに原音を忠実に再生しているかがポイントになる。場合によっては、人の嗜好に合わせて出力の音の周波数特性を意図的に操作することもある。従って、入力に対する出力の伝達特性を知ることがスピーカーの設計では重要になる。また、図1に示すように、スピーカーと逆の経路をたどるのがマイクロフォンだ。マイクロフォンは音を振動板で検知して、これを電気信号に変換して録音する。

スピーカーの原理
図1 スピーカーの原理[クリックで拡大]

 図2にスピーカーの構造を示す。電気信号はコイルに送られ、コイルが磁場下にあるために、コイルには力が発生する。コイルは機構系の振動板(半径aのコーン)につながっており、電気信号に応じて振動板が振動する。振動板はその表面の空気に励振を与え、圧力を発生させ、これが音となって人の聴覚で音として認識される。図1に示すように入力(電気信号)から出力(音)の間にはさまざまな因子が含まれるため、うまく設計しないと原音を忠実に再生できない。このために、スピーカー全体系をモデリングして最適設計を行う必要がある。

スピーカーの構造
図2 スピーカーの構造[クリックで拡大]

スピーカーの機能構造マップ

 図3にスピーカーの機能構造マップを示す。“原音を忠実に再生する”が基本機能で、サブ機能として、原音を電気信号に変換する、電気信号を機構の動きに変換する、機構の動きを音に変換するといったものがある。これを実現する構造としては、主構造“スピーカー”を構成するサブ構造として、変換器、電気/磁気回路、機構などがあり、これらのサブ構造がサブ機能にそれぞれ対応し、各機能を実現している。

スピーカーの機能構造マップ
図3 スピーカーの機能構造マップ[クリックで拡大]

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