スピーカーのモデリング〜電気、機構、音響の連成問題、3つの現象を回路で表現〜:1Dモデリングの勘所(12)(2/5 ページ)
「1Dモデリング」に関する連載。連載第12回では、スピーカーのモデリングを考える。構造/原理を確認して機能構造マップを作成し、これを基にモデリングする。その際、電気系、機構系、音響系の3つの系を回路で表現し、各系を結び付ける関係式を導出することにより、スピーカー全体系のモデリングを行い、電気系、音響系を機構系に縮約してスピーカーの伝達特性を導出する。最後に「Modelica」によるモデリング例を示す。
スピーカー各部の定式化
スピーカーのモデリングでは、電気、機構、音といった異なる現象を統一的に扱う必要がある。そこで、電気回路を基本に、機構および音を電気回路に置き換える回路法を適用する。表1に電気、機構、音の各変数、各要素、変数と要素の関係を示す。このように電気、機構、音の各変数、各要素を対応付けることにより、形式的にではあるが同一形式での表現が可能となる。変数、要素に関しては、連載第9回の図10でも示したように、表1の右側の表記法を用いることにする。以下、この表記法にのっとって、電気回路、機構回路、音回路を構築する。
図4に電気回路の表現結果を示す。入力電圧Vに対して、配線抵抗Ri、コイル抵抗RW、コイルのインダクタンスLが直列に配置されている。ここで、磁石の磁束密度をB、コイル長をlとすると、コイル部には次式の力Fと起電力Vが発生する。
ここでのvはコイルの振動速度である。
図5に機構回路の表現結果を示す。機構回路の入力は電気回路の出力である力Fと振動速度vになる。機構を回路に置き換えるには図5に示すように、いわゆる「MCKモデル」を起点に考える。入力である力Fは機構の3要素(マスmW、コンプライアンスnW、摩擦インピーダンスrW)に並列に作用し、3要素は同じ振動速度vで振動していることを、最終的な機構回路(図5右図)は示している。機構は音に対して下記の体積流量qと力Fp(圧力p)を出力する。
ここでのAはコーンの面積(πa2)、pは圧力である。
図6に音回路の表現結果を示す。音回路の入力は機構回路の出力である体積流量qと圧力pになる。図中のZaLは可動空気の音響摩擦、MaLは可動空気の音響マスで、これらは次式で定義される(参考文献[1])。
ここでのcLは空気の音速、ρLは空気の密度、ωは角振動数である。
参考文献:
- [1]A. Lenk, Grundlagen der Akustik. Skript zur Vorlesung. TU Dresden. Institut für Technische Akustik, Dresden, 1995
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