コードレス掃除機のモデリングについて考える:1Dモデリングの勘所(11)(1/3 ページ)
「1Dモデリング」に関する連載。連載第11回では、コードレス掃除機のモデリングを考える。構造/原理を確認して機能構造マップを作成し、これを基にモデリングする。併せてクリーナー性能にも影響するサイクロン性能の検討も行う。以上の結果を踏まえ、全体系のモデリングを行い、解析、考察を述べ、最後に「Modelica」によるモデリング例を示す。
今回は“コードレスクリーナー(コードレス掃除機)”のモデリングについて考える。コードレスクリーナーの構造/原理に続いて、「機能構造マップ」を作成し、これを基にモデリングを行う。モデルは、モーター、バッテリー、ファン、システム抵抗から構成される。また、クリーナー性能にはシステム抵抗(例:サイクロン性能)が大きく影響するが、これに関する検討も行う。以上の結果を受けて、コードレスクリーナー全体系のモデリングを行い、解析、考察する。最後に、モデリング言語「Modelica」によるコードレスクリーナーのモデリング例を示す。
コードレスクリーナーの構造と原理
図1に、コードレスクリーナーの例を示す。わが家で使用しているマキタ製のバッテリー駆動のコードレスクリーナーで、オプションでサイクロンアタッチメントを装着して使用している。
ファン、モーターによってクリーナー内部が減圧され、これによりブラシ部からゴミを回収し(吸い取り)、サイクロンまたは紙パックでゴミを分離して、きれいな空気のみが排出されるというのがクリーナーの原理である。
クリーナー内部が大気圧以下に減圧されていることから、「真空掃除機(Vacuum Cleaner)」と呼ばれることもあるが、真空度がさほど高いわけではない。コードレスクリーナーはバッテリーから電源が供給され、バッテリーの性能により、クリーナー性能、運転時間が決まる。クリーナーに占めるバッテリー重量は大きく、掃除のしやすさ、運転時間を考慮して、その容量や設置場所が決められる。
コードレスクリーナーの機能構造マップ
図2に、コードレスクリーナーの機能構造マップを示す。“ゴミをコードレスで回収する”が基本機能で、サブ機能として、クリーナー本来の機能の他に、サイズ、重量、環境性に関するものがある。これを実現する構造としては、主構造“コードレスクリーナー”を構成するサブ構造として、図1に示した各構造が構成され、各機能を実現している。
クリーナー性能と圧力損失
図3に、クリーナー内部の圧力変化を示す。ファン出口部を除いてクリーナー内部は大気圧に比べて負圧となっている。実際に掃除をする際には、吸い込み部(ブラシ)を床面に接地させることから図に示すように、大きな負圧が発生する。この負圧と、これにより誘引される流量(流速)でゴミを回収/移動している。
一般的に、“クリーナーの性能はファンが発生する圧力と流量の積(パワー)に比例する”といわれている。システム抵抗によって、圧力と流量は大きく変化するのでクリーナー性能を向上させるためには、システム抵抗(圧力損失)も同時に考える必要がある。
システム抵抗に大きく影響するものとして、サイクロンがある。サイクロンは微粒子を遠心力で捕獲して外部に出さないというクリーナーの重要な機能を実現している。一方で、図4に示すように、サイクロン性能を向上させようとすると、圧力損失が大きくなるという問題がある。従って、ファン性能、バッテリー性能も含めて、サイクロンの性能を適切に決める必要がある。
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