荒廃した土地も芽吹く「BSC工法」の活用事例、水がなくても使えるペレット型も開発:材料技術(2/2 ページ)
日本工営は、東京農業大学や日健総本社とともに開発した表面浸食防止技術「BSC工法」の導入を進めている。2022年度だけで2万m2の土壌にBSC工法を適用しているという。
東京農業大学の敷地でも適用
東京農業大学厚木キャンパスの崩落斜面では、崩壊地の早期緑化や近辺にある伐採跡地と傾斜農地への土壌流出防止を目的に、BSC工法の冬季吹き付けを実施し、2022年11月10日に完工した。
対象の斜面では、BSCのみを適用したエリアやBSCとヤシネットを施したエリア、BSCと種子を散布したエリア、BSCやヤシネット、種子を用いたエリアに分け、それぞれの組み合わせの効果を検証している。各工区の面積は76〜82m2で、合計は3172m2となっている。
東京農業大学 森林総合科学科 教授の矢部和弘氏は、「厚木キャンパスの崩落斜面では、崩落前は草が生えなかったが、BSC工法の吹き付け後、2週間で緑化が進んだ。一部のエリアでは天然繊維のヤシネットを使用している。天然繊維のヤシネットは、設置から4〜5年で土に還る」とコメントした。
この取り組みは、日本工営と日健総本社が保有する技術や東京農業大学が持つ農林水産に関する知識を組み合わせることを目指し、2022年2月25日に締結した包括連携協定の一環として行われた。
奥多摩の演習林にある森林作業道と伐採跡地でも、表土流出の防止と野生動物による食害からの回復を目指し、BSC工法を適用している。
「奥多摩の演習林にある森林作業道と伐採跡地でBSC工法を適用したが、シカによる食害で植物が育たなかった。そこで、歩きにくい網目のヤシネットを用いるだけでなく、BSC工法でシカ不嗜好性植物の種子も散布している。加えて、これまでの吹き付け工では水が必要だったが、演習林に水を運搬することが難しいため、水がなくても散布が可能なペレット型BSC-1の開発を進めている」(矢部氏)。
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