海洋・河川や土壌中での生分解速度が速い新たなPLA樹脂、分解期間の設定にも対応:材料技術
帝人フロンティアは、環境戦略「THINK ECO」を掲げ、幅広く環境配慮型の素材や製品を展開している。この戦略の一環として、従来品と比較して、河川や土壌中での生分解速度が速く、生分解性と実用性を両立するPLA樹脂を開発した。
帝人フロンティアは2022年12月7日、従来品と比較して海洋・河川や土壌中での生分解速度が速いPLA(ポリ乳酸)樹脂を開発したことを発表した。このPLA樹脂は、ポリマーに新たな生分解促進剤を添加することで、強度や成型性などの実用性を損なうことなく生分解速度を高められる。
無添加のPLAポリマーと比較して加水分解にも優れ、より速く分子量を小さくすることが可能となるめ、海洋・河川や土壌中でもより速く生分解される。一方、加工や保管する際には、一般的なPLAポリマーと同様に分子量の低下が小さいため、結晶性や成形性も損なわない。
加えて、通常のPLAポリマーと同様の加工や成型に対応するため、樹脂やフィルム、射出・押出成形品、テキスタイル・不織布などへの加工・成型にも応じる。さらに、生分解促進剤の添加量や条件を調整することで、分解期間もコントロールでき、同社の社内試験では、PLA繊維の分解期間を約6カ月から約2年までコントロールした。例えば、農業や漁業に関する資材へ使用する場合は、その希望耐用年数に応じて、分解期間の設定が行える。
海洋・河川や土壌中でも速く生分解されるため、マイクロプラスチックの削減に貢献するだけでなく、植物由来成分を原料としており、商品ライフサイクルの期間内におけるCO2排出量の削減にも貢献する。
今後は、新たなPLA樹脂を活用し、ペレットや射出・押出成形品、テキスタイル、不織布といった加工品の生産・販売を開始する。2023年度内には、素材の生産・販売を開始し、2026年度には、数億円規模の売上を目指す。
通常のPLA樹脂は、一般的に植物由来成分を原料とし、生分解性を持ち、環境負荷低減ニーズに応え、生分解性素材の中でも高い融点と結晶性を有し、実用性を備えていることから幅広い製品に使用されている。
しかし、高温多湿となるコンポスト環境下では生分解性能を発揮するが、海洋・河川や土壌中では生分解速度が非常に遅いため、マイクロプラスチックが長期間残留するという問題があった。生分解性を向上させると強度が劣るなどの課題も存在した。
なお、通常のPLAポリマーは、加水分解により1万Mn(数平均分子量)未満になると、細菌や菌類に補食可能となり、二酸化炭素や水へ分解される。
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