ポリ乳酸の圧電特性を繊維に生かす、村田製作所と帝人フロンティアが合弁事業:材料技術(1/2 ページ)
村田製作所と帝人フロンティアは、力が加わることで電気エネルギーを生み出し抗菌性能を発揮する圧電繊維「PIECLEX(ピエクレックス)」を共同開発した。このPIECLEXの研究開発と販売を手掛ける合弁企業「株式会社ピエクレックス」を共同で設立し、アパレル企業をはじめとする顧客への提案を進める。
村田製作所と帝人フロンティアは2020年6月4日、オンラインで会見を開き、力が加わることで電気エネルギーを生み出し抗菌性能を発揮する圧電繊維「PIECLEX(ピエクレックス)」を共同開発したと発表した。このPIECLEXの研究開発と販売を手掛ける合弁企業「株式会社ピエクレックス」を共同で設立し、アパレル企業をはじめとする顧客への提案を進める。2020年度中に国内の一部顧客への出荷を開始し、2025年度に売上高100億円を目指す。
会見の登壇者。左から、合弁会社ピエクレックス社長の玉倉大次氏、村田製作所 会長兼社長の村田恒夫氏、帝人フロンティア 社長執行役員の日光信二氏、ピエクレックス 副社長の竹下皇二氏(クリックで拡大) 出典:村田製作所
PIECLEXは、力を加えると電力を生み出す圧電特性を持つポリ乳酸(PLA)を原料とする繊維である。人の動きなどによって繊維が伸び縮みすると、PLAの圧電特性に基づいて繊維内部に電圧が発生し、この電圧によって生じた電場が細菌を失活させるという仕組みだ。生じる電圧は1V程度だが、繊維内部という局所で発生するため細菌を失活させるには十分な電場の大きさになるという。
一般的な抗菌繊維は、繊維に無機系もしくは有機系の抗菌剤を繊維内部に固着させたり、表面加工したりすることで抗菌機能を実現している。この場合、基本的に繊維を後加工するため、洗濯などによって徐々に性能が低下していくという問題がある。PIECLEXは、繊維そのものが抗菌性能を持つため、添加物となる抗菌剤が不要であり、抗菌性能も半永久的に維持できる。
繊維としてのPIECLEXの事業展開を担う合弁企業のピエクレックスは、資本金1億円で村田製作所が51%、帝人フロンティアが49%出資する。本社は滋賀県野洲市の村田製作所野洲事業所内に置き、代表取締役社長は村田製作所出身の玉倉大次氏が、取締役副社長には帝人フロンティア出身の竹下皇二氏が就任する。
PIECLEXの主な用途としては、人の動きによる伸縮が大きい靴下やシューズ、コンプレッションウェア、肌着といったアパレル向けの他、紙おむつやマスクなどの衛生材向けを想定している。
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