見た目は1976年、中身は現代!? バーチャルツインでよみがえる「R2-D2」:3DEXPERIENCE World 2023
「3DEXPERIENCE World 2023」の展示会場では、スターウォーズの「R2-D2」の開発を5カ年計画で進めている「OpenR2」プロジェクトが出展。ダッソー・システムズのソリューションを活用し、バーチャルツインによるモノづくりを推進するとともに、中身を現代風に進化させている。
3D設計/製造ソリューション「SOLIDWORKS」の年次ユーザーイベント「3DEXPERIENCE World 2023」(会期:米国時間2023年2月12〜15日/主催:ダッソー・システムズ)が米国テネシー州ナッシュビルで開催された。事業戦略やビジョン、最新のアップデート情報などが聞けるゼネラルセッション、有識者を招いて行われるゲスト講演、その他多数のテクニカルセッションの他に、ユーザー事例などを多数展示したプレイグランドも見どころになっている。
プレイグランド内の「Makers」ゾーンでは「OpenR2」と呼ばれるオープンソースプロジェクトのメンバーが、EMI Elstree Studiosが1976年に映画制作のために作成した「スターウォーズ」シリーズの人気キャラクター「R2-D2」を、最新技術を取り入れながら現代によみがえらせる取り組みを紹介していた。
OpenR2プロジェクトは2019年に5カ年計画として本格スタートし、当時の仕様や図面などを調査しつつドキュメント化し、ダッソー・システムズの「3DEXPERIENCEプラットフォーム」と「CATIA」を用いて、デザイン形状を忠実に再現したR2-D2のバーチャルツインを構築。外装などの各パーツはFormlabsの3Dプリンタを活用しながら試作し、部品形状の確認を進め、最終的に金属部品として製作が行われている。
「コンセプトは、外側の見た目は1976年、中身は2023年だ」と担当者が説明する通り、忠実度の高いデザイン形状の追求と同時に、中身は最新技術が用いられている。例えば、ハードウェアとして組み込みAI(人工知能)ボード「NVIDIA Jetson」を搭載し、ソフトウェア周りにはOpen Robotics Foundationのロボット用OS「ROS(Robot Operating System)」やNVIDIAのロボティクスプラットフォーム「Isaac」などが用いられているという。また、周辺環境を把握しながら自律移動ができるようにLiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)センサーを搭載するなど、見た目は1976年だが、中身は現代のテクノロジーに置き換えられている。
プロジェクトは4年目に突入しており、後は脚の構造、機構を完成させれば組み立てを開始できるようになり、筐体としての完成は2023年末までを予定する。一方、ソフトウェアおよび制御周りの開発に関しては、Microsoftのロボティクス担当者が協力し、開発を進めており5カ年計画の期間内(2024年内)に完成させる予定だ。
「1976年当時のR2-D2はリモコン操作で自律走行できるものではなかった。そのため、本来搭載されていなかったLiDARセンサーを違和感なく、どのように取り付ければよいか非常に試行錯誤した。スターウォーズの権利はディズニーが保有しているため、一部のパーツを除き、そのほとんどで収益を上げることはしていない。そもそも好きな人間たちが集まって取り組んでいるコミュニティーであり、ビジネスではなく研究プロジェクトのような位置付けだ。メンバー(アクティブメンバー4人、サポートメンバー20人程度)のほとんどが本業の空き時間などを活用して参加している」(担当者)。
ちなみに、一部のパーツとはR2-D2の目(カメラ)と両腕の肩部分を構成するパーツの2点だ。実は前者は航空機などの読書灯が、後者はレコードプレーヤーのカウンター ウェイトが用いられているという。
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