SOLIDWORKSとダッソーの垣根をなくす「3DEXPERIENCE Works」を全てのユーザーに:3DEXPERIENCE World 2023
「3DEXPERIENCE World 2023」の会場で、3DEXPERIENCE Works担当 エグゼクティブバイスプレジデントのジャン・パオロ・バッシ氏に話を聞く機会を得た。MONOist編集部から3つの質問を投げ掛けた。
米国テネシー州ナッシュビルで開催の3D設計/製造ソリューション「SOLIDWORKS」の年次ユーザーイベント「3DEXPERIENCE World 2023」(会期:現地時間2023年2月12〜15日)の会場で、3DEXPERIENCE Works担当 エグゼクティブバイスプレジデントのGian Paolo Bassi(ジャン・パオロ・バッシ)氏に話を聞く機会を得た。
MONOist編集部からは、SOLIDWORKS CEO(最高経営責任者)として務めてきた約7年間で特に注力してきたポイントと今後の役割、3DEXPERIENCE Worksポートフォリオ戦略の方向性、同戦略における最終的なゴールに関する3つの質問を投げ掛けた。
>>>3DEXPERIENCE World 2023 レポート記事一覧:
- 3D推進者が見た「3DEXPERIENCE World 2023」(設計の未来編)
- SOLIDWORKSとダッソーの垣根をなくす「3DEXPERIENCE Works」を全てのユーザーに
- 3D推進者が見た「3DEXPERIENCE World 2023」(展示会場編)
- SOLIDWORKSの裾野をさらに広げ3Dを共通言語に――新CEOに話を聞いた
- デカいは正義!? 人間の力を50倍に増幅できる巨大メカスーツ
- 見た目は1976年、中身は現代!? バーチャルツインでよみがえる「R2-D2」
- SOLIDWORKSは3DEXPERIENCE基盤との融合で想像力の限界を超える
- 「3DEXPERIENCE World 2023」がカントリー音楽の聖地で開幕、実地開催は3年ぶり
SOLIDWORKSの成長を支えてきた約7年間と今後の取り組み
――SOLIDWORKSのCEOとして務めてきた約7年間、どのようなことを特に意識してSOLIDWORKSの強化、成長に取り組んできましたか? そして、新たに3DEXPERIENCE Worksを主導する立場として、この1年間どのようなことに取り組んできましたか?
バッシ氏 SOLIDWORKSのCEOとして、これまで特に重視してきたのは、ワールドワイドにおけるSOLIDWORKSのフットプリント(影響が及ぶ範囲)をいかに拡張できるかという点だ。その間に達成したマイルストーンは大きく2つある。
1つ目は法人におけるSOLIDWORKSのライセンス販売数(シート数)が100万を超え、受注金額が10億米ドルに達したことだ。これらについては2〜3年前に達成している。そして、2つ目はSOLIDWORKSとして初となるWebブラウザベースのモデリングツール「3D Creator」「3D Sculptor」をリリースできたことだ。
また、CADのマーケットシェアにおいて、SOLIDWORKSの比率が42〜43%に達したことも大きな成果として挙げられる。これは私自身の力というよりもチーム全体で成し遂げた結果だといえる。
現在、私の役割はそこからさらに進化し、3DEXPERIENCE Worksを主導する立場となった。3DEXPERIENCE WorksはSOLIDWORKSの機能を、従来の設計だけでなく、シミュレーション、製造、データ管理(ガバナンス)、マーケティングといった領域にまで拡張するもので、SOLIDWORKSのためのプラットフォームだといえる。
顧客ビジネスの成功だけでなく、われわれ自身の収益の2桁成長という高い目標を達成するためにも、3DEXPERIENCE Worksを成長戦略の柱と位置付けて発展させていきたい。これが私自身の重要な職務だと認識している。
一方、昨年(2022年)SOLIDWORKS CEOのバトンを渡したマニッシュ(SOLIDWORKSブランドのCEOを務め、SOLIDWORKSのR&DもリードするManish Kumar氏)は私の親友であり、約12年間SOLIDWORKSで共に仕事をしてきた仲間でもある。彼は入社以来ずっとSOLIDWORKSに携わってきた人物だ。今後SOLIDWORKSというブランドをリードしていくに当たって、彼ほどの適任者はいない。
マニッシュの役割は、SOLIDWORKSというブランドを維持、発展させていき、さらなるイノベーションにつなげていくことだ。SOLIDWORKSは設計の領域にフォーカスしたソリューションになるので、私自身は設計以外の4つの領域を伸ばしながらSOLIDWORKSの成長を補完していきたいと考えている。
――3DEXPERIENCE Worksポートフォリオ戦略は、SOLIDWORKSとダッソー・システムズのソリューションとの垣根をなくし、ユーザーをツールの制約から解放することを狙っているのでしょうか? ツールそのものではなく、目的に応じてやれることを総合的に提案していくようなアプローチに舵を切ったのでしょうか?
バッシ氏 まさにその通りだ。3DEXPERIENCE Worksポートフォリオを通じ、SOLIDWORKSユーザーに対して、「CATIA」「SIMULIA」「ENOVIA」「DELMIA」「NETVIBES」といったダッソー・システムズが展開する12のブランドが有する高度な機能やテクノロジーをシームレスに提供していく。
3DEXPERIENCEプラットフォームを介した障壁のないシームレスな連携を実現するために、われわれはその開発に約10年もの歳月を費やした。その苦労の結果、例えば、SOLIDWORKSで設計し、SIMULIA Abaqusのソルバーを用いて高度なシミュレーションを実行するといった作業をシームレスに実現できるようになった。3DEXPERIENCE Worksは極めてユニークかつ強力なポートフォリオだといえるだろう。
――3DEXPERIENCE Worksポートフォリオ戦略ですが、最終的なゴールというものはあるのでしょうか?
バッシ氏 3DEXPERIENCE Worksポートフォリオ戦略が目指す最終的なゴールは、SOLIDWORKSコミュニティーの全てのユーザーに3DEXPERIENCE Worksが行き渡り、活用してもらうことだ。設計から製造まで、一貫して3DEXPERIENCEプラットフォーム上でビジネスを展開してもらいたいと考えている。これが究極のゴールだ。
現在、3DEXPERIENCE Worksを活用しているSOLIDWORKSユーザーの数は数千人程度だ。今回、2023年7月1日(日本は時期未定)から新たにデスクトップ版SOLIDWORKSのシートを購入(保守契約も必要)したユーザーを対象に、クラウド上の3DEXPERIENCEプラットフォームに接続/連携するためのロール「Collaborative Designer for SOLIDWORKS」を標準提供するとアナウンスしたが、これにより3DEXPERIENCE Worksの利用者数も劇的に伸びると見ている。これを機に、右肩上がりで3DEXPERIENCE Worksを利用するユーザーは増えていくだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- SOLIDWORKSの裾野をさらに広げ3Dを共通言語に――新CEOに話を聞いた
「3DEXPERIENCE World 2023」の会場で、SOLIDWORKS CEO 兼 R&D担当バイスプレジデントのマニッシュ・クマー氏に話を聞く機会を得た。MONOist編集部から3つの質問を投げ掛けた。 - デカいは正義!? 人間の力を50倍に増幅できる巨大メカスーツ
「3DEXPERIENCE World 2023」の展示会場では、EXOSAPIEN TECHNOLOGIESが身体拡張を実現する巨大メカスーツ「PROSTHESIS」の実物を展示し、来場者の注目を集めた。 - 見た目は1976年、中身は現代!? バーチャルツインでよみがえる「R2-D2」
「3DEXPERIENCE World 2023」の展示会場では、スターウォーズの「R2-D2」の開発を5カ年計画で進めている「OpenR2」プロジェクトが出展。ダッソー・システムズのソリューションを活用し、バーチャルツインによるモノづくりを推進するとともに、中身を現代風に進化させている。 - SOLIDWORKSは3DEXPERIENCE基盤との融合で想像力の限界を超える
「3DEXPERIENCE World 2023」の全体講演では、「SOLIDWORKS」および「3DEXPERIENCE Works」を主導する2人のキーマンが登壇し、プラットフォームの価値を訴求。併せて、デスクトップ版SOLIDWORKSユーザーに向けたサプライズも発表された。 - 「3DEXPERIENCE World 2023」がカントリー音楽の聖地で開幕、実地開催は3年ぶり
SOLIDWORKSの年次ユーザーイベント「3DEXPERIENCE World 2023」が米国テネシー州ナッシュビルで開幕した。実地での開催は3年ぶりとなる。 - WebブラウザベースのxAppsを凝縮した「SOLIDWORKS CLOUD」発表
3D設計/製造ソリューション「SOLIDWORKS」の年次ユーザーイベント「3DEXPERIENCE WORLD 2022」がオンラインで開催された。本稿では、新たなオファーとして初日のゼネラルセッションの中でアナウンスのあったWebブラウザベースの3D設計&ライフサイクル管理ソリューション「SOLIDWORKS CLOUD」について取り上げる。