NVIDIAがOmniverseを強化、デジタルツイン用システムやクラウドサービス発表:GTC 2022
NVIDIAは、オンライン開催のユーザーイベント「GTC 2022」の基調講演において、3Dデザインコラボレーション/リアルタイムシミュレーション基盤である「NVIDIA Omniverse」に関するいくつかの新しい発表を行った。
NVIDIAは2022年3月22日(現地時間)、オンライン開催のユーザーイベント「GTC(GPU Technology Conference) 2022」(開催期間:同年3月21〜24日)の基調講演において、3Dデザインコラボレーション/リアルタイムシミュレーション基盤である「NVIDIA Omniverse」(以下、Omniverse)に関するいくつかの新しい発表を行った。
同社 創業者兼CEOのジェンスン・フアン(Jensen Huang)氏は、Omniverseの位置付けについて、グラフィックス、物理演算、シミュレーション、AI(人工知能)といった20年以上に及ぶNVIDIAのテクノロジーがOmniverseの実現を支えていることを強調し、「仮想世界、デジタルツイン、ロボティクスなど“AIの次の波”を実現するためのプラットフォームだ」と説明。また、さまざまな3Dツールを駆使するデザイナー同士のリモートコラボレーションや仮想世界でのシミュレーション、工場や生産ラインを仮想世界で再現する産業用デジタルツインなどの実現において、Omniverseの活用が進んでいることを紹介した。
デジタルツインに最適な「Omniverse」コンピューティングシステム
そのうち、産業用デジタルツインをターゲットに見据えた、データセンター規模のOmniverseコンピューティングシステムとして「NVIDIA OVX」(以下、OVX)を発表した。
OVXは、Omniverse内で実行される複雑なデジタルツインシミュレーションを操作するために設計されたシステムで、現実世界と仮想世界で正確な時間同期を行いながら、相互作用する複数の自律システムの評価やテスト、効率化や最適化の検討、トレーニングなどを行ったりできる。「デジタルツインを実現するには、スケーラブルで、低遅延で、正確な時間をサポートする必要がる。AI向けに『NVIDIA DGXシステム』があるように、Omniverse向けにOVXシステムを用意した」(フアン氏)。
OVXシステムは、GPUとして「NVIDIA A40」を8基、ネットワークアダプターに200Gbps対応の「NVIDIA ConnectX-6Dx」を3基、CPUにIntelの第3世代Xeon SP(Ice Lake)を2基、1TBのシステムメモリおよび16TBのNVMeストレージで構成されている。
さらに、OVXシステム8台からなる単一の「NVIDIA OVX POD」、あるいは「NVIDIA Spectrum-3」スイッチファブリックによって32台のOVXシステムを接続して、「NVIDIA OVX SuperPOD」を形成することで、より大規模なデジタルツインシミュレーションを実現できるという。
RTX搭載マシンがなくても「Omniverse」で共同作業に参加できる
また、フアン氏は「Omniverseは世界中の多くのデザイナーやクリエーター、ロボティクスやAIの研究者に活用されるべきだ」と述べ、クラウドサービスの「Omniverse Cloud」を開発したことを発表した。
Omniverse Cloudは、コラボレーション共有ツール「Nucleus Cloud」によって、大量のデータセットを転送することなく、複数の関係者がどこからでも大規模な3Dシーンにアクセスして、共同編集作業が行えるサービスである。また、リアルタイムかつインタラクティブに3Dの世界を構築できるアプリ「Omniverse Create」や、3Dツールに慣れていないユーザーがOmniverseのシーンを表示できるアプリ「Omniverse View」も同サービスに含まれ、「GeForce NOW」プラットフォームによってストリーミングしながら共同作業に参加できる。
リンクを送信することで、他の共同作業者や関係者をセッションに招待することも可能だ。さらに、ハイエンドの「GeForce」「RTX」システムを持たないユーザーやチームでも、Omniverse Cloudプログラムにサブスクライブ(利用登録)するだけで、Omniverse CreateとOmniverse Viewの全機能が使える。
基調講演では、3人のデザイナーと、「Omniverse Avatar」によって生み出されたAIアバターが、Omniverse Cloudを利用して建築プロジェクトに取り組む様子を紹介した。3人+AIアバターで構成されたチームは、Nucleus CloudでホストされているOmniverseのシーンにアクセスし、Web会議システムを通じてコミュニケーションをとりながら作業を推進。その際、デザイナーの1人はRTX搭載ワークステーションでOmniverse Viewを実行し、残り2人のデザイナーはGeForce NOWによって、ノートPCとタブレット端末にOmniverse Viewをストリーミングしながら作業に参加する様子を示していた。
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