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製造業こそ「メタバース」に真剣に向き合うべきMONOist 2022年展望(1/3 ページ)

2022年は「メタバース」に関するさまざまな技術やサービスが登場すると予想されます。単なるバズワードとして捉えている方も多いかと思いますが、ユースケースをひも解いてみると、モノづくりに携わる皆さんや設計者の方々にも深く関わっていることが見えてきます。一体どんな世界をもたらしてくれるのでしょうか。

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 オンライン上に構築されたバーチャル空間の中で、実世界の離れた場所にいる人たちが交流/活動できるサービス、あるいはこうした空間そのものを意味する「メタバース」。言わずと知れた2021年のバズワードであり、今年(2022年)さまざまな関連技術やサービスが登場すると見込まれる注目の存在です。

 では、モノづくりに携わる皆さん、設計者の方々にとって、メタバースはどのような世界をもたらしてくれるものなのでしょうか。本稿では、筆者の解釈に基づき「メタバースとは何か?」に触れつつ、モノづくりや設計業務にどのように関わってくるものなのかを4つのユースケースで紹介し、2022年の新年展望としたいと思います。

⇒「MONOist 新年展望」バックナンバーはこちら

メタバースとは何か

 まずは、筆者の解釈を交えながら、メタバースの定義について整理しておきましょう。メタバースとは、オンライン上に構築された3Dのバーチャル空間、あるいはそのサービスのことを指します。「空間」そのものは、現実世界を忠実に模したものであったり、全く別の世界であったり、そのハイブリッドであったりとさまざまです。

 自分自身だけでなく、離れた場所にいる他者ともそのバーチャルな空間を共有できる点が特徴であり、個々で楽しむだけでなく、交流したり、何かの作業を一緒に行ったりといったことが可能です。

 また、デジタルツインの“デジタル側”の環境を1つのバーチャル空間とし、実世界を模した仮想環境の中で、現実世界では試すことのできないような大がかりなシミュレーションや実験を行ったり、通常では見ることができないものを可視化したりといったことを実現できます。

 メタバースにおけるバーチャル空間は3Dモデル、都市や建物などの空間モデルといったもので構築され、利用者はVR(仮想現実)デバイスやPC、スマートデバイスなどを介して実世界からバーチャル空間に入り込みます。バーチャル空間ではオリジナルのアバターや、ユーザーの容姿を模したリアルアバターなどを自身の分身とし、行動することも可能です。ちなみに、メタバースとVRは混同されがちですが、VRはメタバース(バーチャル空間)に没入するための1つの「手段」だと捉えることができます。

4つに分類できるメタバースのユースケース

 次に、ユースケースについて考えてみます。ここでは大きく「エンターテインメントメタバース」「ビジネスコラボレーションメタバース」「デザインコラボレーションメタバース」「インダストリーメタバース」の4つに分類し、モノづくり/設計者の視点を交えて、その活用方法を模索します。なお、これら4つの分類は筆者の解釈に基づいて定義した名称となりますので、あらかじめご了承ください。

1.エンターテインメントメタバース

 エンターテインメントメタバースと表現したユースケースは、「フォートナイト」に代表されるようなオンラインゲーム、メタバース空間内での音楽ライブやスポーツ観戦イベント、ショッピング体験などが該当します。また、ブロックチェーン技術を用いたメタバース空間においては、NFT(非代替性トークン)の土地やアイテム、アート作品などを売買するといった経済活動が行われているものもあります。これらを総称して、ここではエンターテインメントメタバースとしていますが、メタバースについて最もイメージしやすいユースケースかと思います。

エンターテインメントメタバースのイメージ図
エンターテインメントメタバースのイメージ図[クリックで拡大]

 モノづくりの観点で考えると、製品プロモーションやマーケティング、CSR(企業の社会的責任)活動に活用できる可能性があります。日産自動車が2022年1月11日に開催するメタバース上での体験イベント「日産アリアとめぐる環境ツアー」などが非常に分かりやすい取り組みだといえます。日産自動車は仮想空間上にバーチャルギャラリー「NISSAN CROSSING」を展開するなど、デジタル空間を新たなコミュニケーションの場として位置付け、その展開を強化しています。

日産自動車、メタバース上で体験する「日産アリアとめぐる環境ツアー」を制作
日産自動車、メタバース上で体験する「日産アリアとめぐる環境ツアー」を制作[クリックで拡大] 出所:日産自動車

 また、バーチャルショールームとセットで、NFTを活用したデジタルアイテム(例えば、自社製品の3Dモデルやスケッチなどのデータ)の販売を行うといった展開も十分に考えられるでしょう。正直、その可能性は未知数ですが、自社製品の新しい訴求のカタチがメタバースとNFTの組み合わせによって示されるかもしれません。

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