協働ロボットの不満を埋める、デンソーウェーブが高速で“簡単に使える”新製品:協働ロボット(2/2 ページ)
デンソーウェーブは2022年3月1日、同年4月に発売予定の、高速動作と“使える”簡単さを実現した協働ロボット「COBOTTA PRO」シリーズの詳細について説明会を開催した。
“使える”簡単設定の実現
“使える”簡単設定の実現については、新たなビジュアルプログラミングツールとダイレクトティーチング方式を用意した。澤田氏は「従来の協働ロボットにおける簡単さを追求したプログラミング支援ツールは、初心者が限られたことを行うためにはよいものだった。一方で、専門技術者が複雑なことを行うためのツールなども既に用意されている。ただ、専門家以外が少し複雑なことを行いたくなった場合に一気にハードルが高くなるという課題があり、中抜けの状態になっていた。これを埋めるためのツールを用意した」と語る。
新たに用意したビジュアルプログラミングツールは、ブロックベースのオープンソースビジュアルプログラミング言語であるBlocklyを採用し、ブロックごとのプログラムを組み合わせることで簡単にロボット作業のプログラミングが行える。また、プログラムの文法エラーが発生した場合は、ブロックを置くことができないために「エラーが解決できずに挫折する」ということが起こらない。澤田氏は「これにより、プログラム初心者でも協働ロボットで少し複雑な動作をさせることができるようになる」と語る。
また、ダイレクトティーチングについても従来のように全てを人手の直感的な形だけで行うのではなく、論理的手法と組み合わせることで、より精緻な動作プログラムを簡単に行えるようにした。「従来のダイレクトティーチングは直感的にアームを動かすことで教示するものだが、短時間でおおよその位置や姿勢を作るだけで、デモなどには良いが、現場で実際に使える場面は少なかった。新製品では、直感的手法とペンダントでの数値設定による論理的手法を組み合わせ、0.1mm制度のダイレクトティーチングを行えるようにした」と澤田氏は語る。
例えば、XYZ方向で軸を固定したり、精密な動作時にはロボットの動きを遅く(重く)することで、明確な数値設定と同様の精密設定をダイレクトティーチングで行えるようにしている。
高難度作業への対応
人の作業をそのまま置き換えるようなロボットにとっての高難度作業への対応を実現する機能としては、統合制御の強化を進める。これはロボットコントローラー「RC9」により実現している。
「RC9」は、産業用PC(IPC)にインストールするファームウェアとして提供されるロボットコントローラーだ。従来はCPUと産業用ロボットのドライバーを一体化させたオールインワン型のコントローラーが主流だったが、このうちCPUをベッコフオートメーション製のIPCに置き換え、これにより顧客が求める性能に応じた仕様のIPCを自由に選択できるようになった。同時に、PCベース制御技術である「TwinCAT」をIPCに搭載することで、ロボットのリアルタイム制御も実現している。
協働ロボットは、量産ラインで使われる通常の産業用ロボットと異なり、スタンドアロン型のシステムとして使われるケースも多く、ロボットコントローラーそのものが、他の機器と連携し共通制御を行うことが必要な場面も生まれてくる。「RC9」により、ロボットコントローラーのオープン化を進めたことで、さまざまな機器を連携させた高難度作業のシステム化なども容易に行えるようになる。
澤田氏は「この他にもルールベースの物体認識やAI模倣学習など、さまざまな技術開発を2016年頃から準備してきた。ロボットをより幅広い場面で簡単に使える仕組みを用意している」と述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 組み立て工程で使える協働ロボット、最大TCP速度2500mm/sで繰り返し精度±0.04mm
デンソーウェーブは2021年10月19日、高速で高精度の中型人協働ロボット「COBOTTA PRO(コボッタプロ)」を開発し2022年4月に発売すると発表した。 - オープン化だけじゃない、「RC9」は産業用ロボット開発の「簡単化」も目指す
Beckhoff Automation(以下、ベッコフオートメーション)とデンソーウェーブは、両社が共同開発した次世代ロボットコントローラー「RC9」に関するテクニカルセミナーをオンラインで開催した。RC9の製品コンセプトである選択性やオープン性の他、プログラミング技術の習熟度に関わらず制御を行えるようにする「簡単化」などの内容を具体的に解説した。 - デンソーウェーブが産業用ロボット向けのAI模倣学習システムを2021年3月に発売
デンソーウェーブは2021年1月28日、「AI模倣学習」についてのウェビナーを開催。その中で産業用ロボット向けの模倣学習AIを産業用ロボットに適用したシステムを製品化し、2021年3月をめどに提供を開始することを明らかにした。 - 事例で振り返る協働ロボットの使いどころ
成果が出ないスマートファクトリーの課題を掘り下げ、より多くの製造業が成果を得られるようにするために、考え方を整理し分かりやすく紹介する本連載。第14回では、「使いどころを探すのに苦労する」という声の多い協働ロボットについて、実際の事例をベースに紹介します。 - 協働ロボットはコロナ禍の人作業を補う手段となり得るか
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による混乱は2021年も続きそうな兆しを見せている。製造現場でも人の密集や密閉空間による作業が制限される中、これらを回避するために人作業の一部を代替する用途で期待を集めているのが協働ロボットの活用だ。2021年はコロナ禍による働き方改革も含め、製造現場での協働ロボット活用がさらに加速する見込みだ。 - 協働ロボット普及のカギは「用途別パッケージ」、2020年は“第3の道”にも期待
人口減少が加速する中、製造現場でも人手不足が深刻化している。その中で期待を集めているのがロボットの活用だ。特に協働ロボットの普及により人と同一空間を活用し新たな用途開拓が進んでいる。2020年はこれらの技術進化による普及が本格的に進む一方で、「人」との親和性をさらに高めた“第3の道”の登場に期待が集まっている。 - 人手不足対策で完全自動化は逆効果、人とロボットの協力をどのように切り開くか
人手不足に苦しむ中で、工場でもあらためて自動化領域の拡大への挑戦が進んでいる。その中で導入が拡大しているのがロボットである。AIなどの先進技術と組み合わせ、ロボットを活用した“自律的な全自動化”への取り組みも進むが現実的には難易度が高く、“人とロボットの協調”をどう最適に実現するかへ主流はシフトする。 - 協働ロボット、ロボットシステムに残された課題と未来
協働ロボットを現場で活用するのにどのような工夫が必要か――。ロボット技術の総合展示会「2017国際ロボット展」では、ロボットメーカーおよびユーザー企業によるパネルディスカッション「ロボットフォーラム2017」が実施され、協働ロボットの意義について語った。 - 機械は人の仕事を奪わない、“人とロボットがともに働く現場”が拡大へ
2016年は人工知能関連技術が大きな注目を集めて「機械が人間の仕事を奪う」という議論が大いに盛り上がりを見せた。こうした一方で2017年には「現場」において、こうした動きと逆行するように見える「人とロボットが協力して働く世界」が始まりを迎える。