人手不足対策で完全自動化は逆効果、人とロボットの協力をどのように切り開くか:MONOist 2019年展望(1/3 ページ)
人手不足に苦しむ中で、工場でもあらためて自動化領域の拡大への挑戦が進んでいる。その中で導入が拡大しているのがロボットである。AIなどの先進技術と組み合わせ、ロボットを活用した“自律的な全自動化”への取り組みも進むが現実的には難易度が高く、“人とロボットの協調”をどう最適に実現するかへ主流はシフトする。
「ロボットやAI(人工知能)に人の仕事が奪われる」というようなロボット(AI)脅威論が世界中で巻き起こっているが、その議論の中でほぼ唯一蚊帳の外にあり、深刻度が薄いのが日本である。アニメーションや書籍などでロボットやAIを身近な存在として描くものも多く、これらを敵としてあまり捉えないという感情的な側面もあるが、それよりも大きいのが、そうは言ってられないほど「労働力が不足」してきているからである。
日本は世界の主要国家に先駆けて人口減少局面にあり、労働人口の現象は深刻化している。2016年10月時点の人口ピラミッドを見るとすでに老年人口は27.3%に達している。15〜64歳の生産年齢人口は1992年をピークに減少し続けており、「人」を中心とした労働に頼っていては成長を実現できないことは明らかな状態である。
そのため「人の仕事が奪われる」という危機感ではなく、「担える仕事はできればロボットに担わせたい」という状況が生まれているというわけである。
AIなど最新技術を使った新たな自動化への挑戦
こうした状況から多くの製造業がここ1〜2年“再チャレンジ”してきたのが、AIやIoT(モノのインターネット)など先進技術を活用した「新たな全自動化」である。組み立て製造業はもちろん、半導体などの精密機器や素材や飲料などのプロセス製造業では全自動化が前提となっているが、それでも工場の中では人手の領域が数多く残されている。
“再チャレンジ”としたのは、日本の製造業は多くが第3次産業革命とされた時期に工場の全自動化を進めた過去があるからである。1980年代頃には、コンピュータの登場と業務への活用が進み工場でもPLCなどのオートメーション機器が登場した。これにより自動生産が実現できるようになり、この頃には完全自動化工場が数多く登場した。
しかし、当時の自動化は柔軟性に欠けるものだった。最終製品のニーズが多様化へと進む中で生産現場には多品種少量生産が求められ、こうした動きに対応が難しいことから徐々に完全自動化工場は廃れていった。多くの製造業では人手によるセル生産など、人手の柔軟性を活用する方向で、ニーズの多様化に対応する道を進んだ。
ただ、先述した通り、この柔軟性を実現する“人手”が大きく不足してきているのが現状だ。そこで、「柔軟性を伴った自動化」を実現するために期待を集めているのが、スマートファクトリー化の動きである。これはIoTやAI、ロボットなどを活用することで、大量生産の効率性で多品種少量の製品を求められるタイミングで製造できるようにする取り組みのことだ。その中でこれらの先進技術を活用した新たな自動化への取り組みが広がりつつある。
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