人手不足対策で完全自動化は逆効果、人とロボットの協力をどのように切り開くか:MONOist 2019年展望(2/3 ページ)
人手不足に苦しむ中で、工場でもあらためて自動化領域の拡大への挑戦が進んでいる。その中で導入が拡大しているのがロボットである。AIなどの先進技術と組み合わせ、ロボットを活用した“自律的な全自動化”への取り組みも進むが現実的には難易度が高く、“人とロボットの協調”をどう最適に実現するかへ主流はシフトする。
“新たな自動化”でも完全自動化には進まない
“新たな自動化”が進む中で、ロボットなどを活用した完全自動化への期待もあらためて高まっていたが、スマートファクトリー化への取り組みなどを見ていると、現状では難しいことが見えてくる。自動化領域を拡大すると、失われてくるのが、バッファーの存在であるからだ。
例えば、安川電機が同社のスマート工場を体現する工場として埼玉県入間市に建設した「安川ソリューションファクトリー」の組み立て工程では、産業用ロボットによる完全自動化が実現しているが、産業用ロボットの工程間に人が入って作業が行えるスペースを用意している。産業用ロボットが故障した際でもラインを止めずにすむように、壊れたロボットの作業は止めたまま飛ばして、人用ブースで作業員が代替して作業を行えるようにすることを目指したものだ。
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産業用ロボットでのモーター組み立てライン。透明のロボット作業工程の間にある白いブースが人の入れるスペース。通常は部品投入などを行っているが、非常時にはここで人がロボットに代わって作業できるようにしている
自動化が進めば、効率性は上がるが、故障など異常への対応が難しくなる。そのため生産システムとしては個々の信頼性を高める必要があるわけだが、それでも故障など想定外の状況が常に発生するのが製造現場である。こうした異常や変化に対応するには人の力が機械よりも大きく優れている。そこで人と機械がより密接に協力して働く環境が進もうとしているのが現状だ。
人と共に働くロボットへの期待
人と機械が協力で注目を集めているのが、人と同じ空間でともに働く協働ロボットである。従来の産業用ロボットは安全柵などで人と作業空間を完全に分離しなければ、利用することができなかった。しかし、安全技術の発展やISOなどの国際規格の整備が進んだことで、新たに人と共に働くことができる協働ロボットの投入が進んでいる。
この領域にいち早く勝機を見いだして先行し、多くの導入実績を持つのがデンマークのユニバーサルロボットだ。ドイツの自動車メーカーでの大量導入などを含め、数多くの生産ラインなどで採用されている。日系メーカーでは「緑のファナック」として注目を集めた、ファナックの協働ロボットは既に大型から小型までさまざまなラインアップが投入されている。またカワダロボティクスや川崎重工の双腕ロボットや、安川電機、デンソーウェーブなども製品を展開している。オムロンも台湾テックマンと協業し、協働ロボットの展開を開始している。今後もさらに参入企業が増え、投入製品も増えてくる見込みである。
ただ現在は「製造現場でどのように使うのが最適か」を模索している状況だ。協働ロボットは安全性などの面から、動作速度や可搬力などは従来の産業用ロボットよりは抑えている。そのため、作業効率は低く、製造作業そのものを担うのは向いているとはいえない。そこでどこで使うべきなのかというのをさまざまな企業が実証を行っている。
当面は、「製造現場の柔軟性を担う人の作業を支援する」という役割を担う。部品などのピックアップや搬送、組み立て補助、検査の補助などでの活用が想定されている。また、AGVと組み合わせて、移動しながら部品をピックアップするようなことも期待されている。2019年はこれらの実導入が本格的に広がる見込みである。
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