機械は人の仕事を奪わない、“人とロボットがともに働く現場”が拡大へ:MONOist 2017年展望(1/3 ページ)
2016年は人工知能関連技術が大きな注目を集めて「機械が人間の仕事を奪う」という議論が大いに盛り上がりを見せた。こうした一方で2017年には「現場」において、こうした動きと逆行するように見える「人とロボットが協力して働く世界」が始まりを迎える。
2016年は人工知能(AI)関連技術に大きな注目が集まり、特にGoogle DeepMindの「AlphaGo」が現役囲碁チャンピオンに勝利したことからも「機械VS人間」の議論が大いに盛り上がった※)。ただ現実的には、開発が進むAI技術にしても、AIによる分析や思考などで生み出される結果を表現するロボット技術についても、人の存在そのものを置き換えることはない。現状では技術の方向性が「人」を全てカバーするような汎用的なものではなく、人間が担っている一部の作業を代替する従来の「道具としての機械」という役割は当面変わることはない。
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「機械VS人間」の構造が否定される中で、現実的に2017年に進みそうなのが「人と機械の協調」である。特にロボット技術では、規制緩和や技術革新が加速している点から人と共に働く「協働ロボット」の実導入が進む見込みだ。
「協働ロボット」を使うメリットと課題
「協働ロボット」とは、人と同じ空間でともに働く人間協調型のロボットである。英語では「Collaborative Robots」とされ、最近では「Cobot(コボット)」という略称が定着してきた。
協働ロボットでは、人とロボットが同じ空間を共有して作業を行うことになり、動作によっては人間に危害を加えてしまう可能性がある。これらを解決するために、既にISO(国際標準化機構)では「ISO/TS 15066」により、作業スペースを従来のようにロボットだけが作業する「動作スペース(通常領域)」と「協働作業スペース(限定領域)」に分けて、それぞれで安全性を確保することが規定されている。従来は「柵」により物理的に切り分けてきたが、これらをセンサー技術や認識技術などを活用して切り分けることが可能となった。
さらに、人間と接触した際にも、けがなどの被害を最小限にするような保護の仕組みも必要になる。受容可能な圧力や人体の苦痛などに関する閾値、人間の体のどの部分に当たるかで影響度についても配慮する必要性が訴えられている。実際に接触が発生したときには緊急停止する仕組みなどが組み込まれている他、緊急停止した際にも作業復帰が容易になる機能も開発され、より使い勝手としても高まってきた印象だ。
規制緩和に加えてこうした規定が整備されてきたことで、2014年頃から協働ロボットのリリースが加速。ファナックやドイツのKUKAなどが既に導入を進めている他、ベンチャー企業ではデンマークのユニバーサルロボット(UNIVERSAL ROBOTS)などが実際に導入を伸ばしている。その他、安川電機やデンソーウェーブなども製品を開発し、2015年末の「国際ロボット展」に出展した。
協働型ロボットでは、人型を模して腕を2つ備えた双腕型も注目されている。人の作業をそのまま代替することをイメージしており、双腕ロボットでは老舗ともいえるカワダロボティクスの他、ABBや川崎重工業などが製品展開を行っている。
これらの協働ロボットは既に実証段階での導入は数多く行われており、2017年は実導入が本格的に広がる1年になるとみられている。
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