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機械は人の仕事を奪わない、“人とロボットがともに働く現場”が拡大へMONOist 2017年展望(2/3 ページ)

2016年は人工知能関連技術が大きな注目を集めて「機械が人間の仕事を奪う」という議論が大いに盛り上がりを見せた。こうした一方で2017年には「現場」において、こうした動きと逆行するように見える「人とロボットが協力して働く世界」が始まりを迎える。

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普及を後押しした政策支援

 協働ロボットの普及に向けて大きなきっかけとなったのが「規制緩和」だ。従来は80W以上のロボットについては、柵で囲い人間の作業スペースから隔離しなければならないという国内規制が存在した。しかし、技術進歩により海外で規制緩和が進む中、国内でも2013年12月に規制緩和が行われ、「ロボットメーカー、ユーザーが国際標準化機構(ISO)の定める産業用ロボットの規格に準じた措置を講じる」などの条件を満たせば、80W以上の産業用ロボットでも人と同じ作業スペースで、働くことが可能となった。これにより、柵や設置スペースなどの負担を軽減できるようになった他、従来設置できなかった場所でもロボットを活用できるようになった。

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産業用ロボットは柵が必須だったが規制緩和で不要に

「ロボット新戦略」が追い風に

 さらに、日本政府が推進する「ロボット新戦略」なども追い風となっている。「ロボット新戦略」は、2015年1月に安倍政権の「日本再興戦略」の一環として公開され、2015年5月に設立された「ロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)」によって推進されている※)

※)関連記事:「ロボット革命」と「3つの世界一」、政府「ロボット新戦略」を読み解く

 「ロボット新戦略」は「センサー、AIなどの技術進歩により、従来はロボットと位置付けられてこなかったモノまでロボット化し(例えば、自動車、家電、携帯電話端末や住居までもがロボットとなる)、製造現場から日常生活のさまざまな場面でロボットが活用されることにより、社会課題の解決やモノづくり・サービスの国際競争力の強化を通じて、新たな付加価値を生み出し利便性と富をもたらす社会を実現する」というロボット革命の実現を目指している。

 RRIでは、これらを実現するためにインダストリー4.0などの動きに対応する「IoTによる製造ビジネス変革WG」、ロボットをより多くの産業や生活の場に導入することを目指す「ロボット利活用推進WG」、技術開発を模索する「ロボットイノベーションWG」の3つで活動を推進。実際に政策支援などを受けられる環境が整備されてきた※)

※)関連記事:「うちも第4次産業革命をやれ」という指示は、既に本質を外している

 「日本はロボット大国」ともいわれているが、現実的には製造現場向けの産業用ロボットなどで中国メーカーの追撃を受けており、性能面や価格面で競り負けるような場面も増えてきている。

 ただ、ロボット関連技術に加えて、従来の製造業向けでの強みと、新領域へのロボットの産業実装の実証、などをバランスよくそろえている環境は世界でも少なく、世界中のロボット関連企業から日本は大きな注目を集めている。「ロボット新戦略」のもと、2020年にはロボットの国際大会「World Robot Summit」を開催することなども発表※)。政府の後押しが日本のロボット産業を大きく後押ししている。

※)関連記事:2020年にロボットの国際大会を日本で開催、3分野6種目で実施

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