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芽吹くか「組み込みAI」MONOist 2017年展望(1/2 ページ)

第3次ブームを迎えたAI(人工知能)。製造業にとっても重要な要素技術になっていくことは確実だ。2017年からは、このAIを製品にいかにして組み込むかが大きな課題になりそうだ。

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 2016年は第3次ブームと呼ばれるほどに、AI(人工知能)への注目が急速に高まった1年だった。2014年ごろから、GPUベンダーのNVIDIAを中心として、GPGPU(GPUによる汎用計算)を用いたディープラーニング(深層学習)に関する取り組みが大きく進展していたが、2016年はそういった種が芽吹いた年と言ってもいいだろう。

 第3次AIブームを象徴していたのが、2016年3月にGoogle DeepMindの「AlphaGo」が現役囲碁チャンピオンに勝利したことだろう。AlphaGoは、AIが人間を超える技術特異点「シンギュラリティ」の可能性を、技術者だけでなく一般消費者にも分かりやすく示した。また、このAlphaGoの技術ベースとなっていたディープラーニングは、シンギュラリティに向けたAIのブレークスルー技術と見なされるようになった。

「AlphaGo」と現役囲碁チャンピオンが対戦する様子
「AlphaGo」と現役囲碁チャンピオンが対戦する様子 出典:Google DeepMind

 時を同じくして、こちらもある種ブームといえるほどに加熱しているのがIoT(モノのインターネット)だ。IoTでは、さまざまなデバイスが通信接続によって“つながる”ことで、これまでとは比べものにならないほど大量のデータ(ビッグデータ)が収集できるようになる。これまで、これらのビッグデータを分析し、その分析結果からを適切な判断を下すのは人間の役割だった。

 しかしIoTから得られるビッグデータの種類と量が増えれば増えるほど、人間では対応が追い付かなくなる。そこで、人間に代わってビッグデータを基にした分析と判断を行うものとして、第3次ブームを迎えたAIへの期待が高まっているわけだ。

エッジコンピューティングに最適なAIとは

 ここからは製造業とAIの関係について考えてみたい。2016年までIoTの活用を積極的に検討することを求められてきた製造業だが、今後はIoT活用にAIをどのように組み合わせていくかも検討しなければならなくなるだろう。

 IoTの枠組みの中で、AIをシンプルに生かすことを考えるのであれば、得られたビッグデータをそのままクラウドに上げてしまえばよい。クラウド上であれば、強力なマシンパワーを用いた高度なAIをサービスとして利用できるからだ。

 2016年の1年間で、ITベンダーが提供するAIサービスは一気に拡充された。国内勢が、AIサービスにブランド名を付けて展開を始めたことがトピックになるだろう。例えば、NECの「NEC the WISE」、富士通の「Zinrai」、日立製作所の「Hitachi AI Technology/H」などだ。

 ただし現在考えられているIoTの枠組みはもう少し複雑だ。IoTから直接ビッグデータをクラウドに上げるのではなく、センサーなど末端のIoTデバイスや、いくつかのIoTデバイスからデータを収集してまとめるエッジノードでも分析や判断を行えるようにする必要があるからだ。

IoTの枠組みにおける「エッジ」これらのエッジで分析や判断を行えるようにする必要があるといわれている IoTの枠組みにおける「エッジ」(左)。これらのエッジで分析や判断を行えるようにする必要があるといわれている(右)。日本ヒューレット・パッカード(日本HPE)はエッジ志向を打ち出すため、エッジコンピューティング向けの新製品を投入した(クリックで拡大) 出典:日本HPE

 エッジコンピューティングや“フォグ”コンピューティングとも呼ばれている仕組みだが、その最大の理由はリアルタイム性の確保である。IoTから得られるデータはまさに大量のデータであり、それらをクラウドに送り、AIで分析/判断し、フィードバックするには一定の遅延(レイテンシ)が発生する。

 この遅延の許される範囲が秒単位であればまだしも、ミリ秒やマイクロ秒といった場合には、より製品に近い場所で分析/判断を実行する必要が出てくる。エッジコンピューティング/フォグコンピューティングであれば、遅延時間をミリ秒やマイクロ秒の範囲内に収められると考えられているのだ。

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