協働ロボット、ロボットシステムに残された課題と未来:協働ロボット(1/2 ページ)
協働ロボットを現場で活用するのにどのような工夫が必要か――。ロボット技術の総合展示会「2017国際ロボット展」では、ロボットメーカーおよびユーザー企業によるパネルディスカッション「ロボットフォーラム2017」が実施され、協働ロボットの意義について語った。
協働ロボットに大きな注目が集まっているが、活用することによって現場はどう変化するのか――。ロボット技術の総合展示会「2017国際ロボット展」(東京ビッグサイト、2017年11月29日〜12月2日)では、ロボットメーカーおよびユーザー企業によるパネルディスカッション「ロボットフォーラム2017」が開催。「働く現場を変える!ロボットとともに」をテーマに、協働ロボットの活用方法などについて意見を交わした。
「ロボットフォーラム2017」にはロボットメーカーから川崎重工業 常務執行役員 ロボットビジネスセンター長 橋本康彦氏、安川電機 執行役員 ロボット事業部長 小川昌寛氏、ファナック 取締役専務執行役員 ロボット事業本部長 稲葉清典氏、ABBグループ シニアバイスプレジデント ロボティクス事業責任者 パーベガード・ニース氏、不二越 フェロー 国崎晃氏、KUKA Roboter 最高経営責任者(CEO) ステファン・ランパ氏が出席した。ユーザー企業としては、トヨタ自動車 生産技術本部 工程改善部部長 大倉守彦氏、ニトリホールディングス 上席執行役員・ホームロジスティクス 社長 松浦学氏が参加した。
協働ロボットの意義
前回(2年前)に実施した同フォーラムでは「人とロボットが協働するときに、どうすみ分けるのか」ということが論議されたが、今回は「人とロボットが協働するときに現場ではどのような変化が起こっているのか」について、事例を含めてパネリストが発言した。
まず、ABBグループのニース氏が「10年前は大きな部品や部材を運ぶ産業用の大型ロボットが、主に自動車メーカーに導入されるケースが主流だった。大量生産向けにロボットが使われていた。今ではさまざまな大きさ、用途向けのロボットが稼働し、少量多品種生産に対応している。それが、人とロボットが協働する意義となっている」と現状を述べた。
日本でも課題となっているのが労働者の高齢化で、スキルのある熟練労働者を確保することができない状況にあり、そのためロボットソリューションが幅広い業界で活用されるようになってきている。
ニース氏は「協働といってもその意味は人や職場によってそれぞれ違う。まず安全性というものがあり、加えて導入と設置のしやすさ、プログラムのしやすさ、シンプル化(とにかく簡単に)などのさまざまな要素がある。新しいロボットの使い方に変えていくためには、将来の必要性を踏まえることが大切だ。それにはソリューションが、とにかく簡単であることが重要」と述べた。
従来はロボットの活用は、人間の作業空間と完全に切り分ける必要があり、安全柵で仕切られた場所で作業していた。今は、共存、同期(分担作業)、協調(合同作業)と3種類の次元での協働が行われており「そうした中で、われわれはより簡単な方法を示唆する義務がある。生産性を高めるためにもさまざまな取り組みを行っているが、その1つが協働ロボットの活用であり、明確なベネフィットを提供できるようにする。ロボットユーザーの裾野が、中小企業へと広がることなども期待している」と期待感を示した。
川崎重工業の橋本氏は、労働人口の減少、労働者の高齢化が進む中で技能の消滅危機などに対応するため、人と共存、適用範囲を拡大できるロボットの提案が必要だと強調する。技能が継承できる新ロボットの提案を行い、働く現場を変えていくという取り組みを行っているという。
「共存ロボットを活用した働き方改革は、工場だけでなくさまざまな場所に拡大している。ただ、ロボットを使った経験がない人もいることから、共存ロボットが広がるためには、顧客に安全上のリスクアセスメントや操作、教示の簡易化、共通化などが必要になる」と述べた。
さらに橋本氏は「今後共存ロボットがさらに働き方を変えることが考えられ、それにはIoTやAIの活用が必須となる。うまく活用することで高齢者の労働継続や技能伝承なども実現できる」と述べ、同社の同社の新ロボットシステム「Successor(継承者)」での取り組みなども紹介した。
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