オープン化だけじゃない、「RC9」は産業用ロボット開発の「簡単化」も目指す:産業用ロボット(1/2 ページ)
Beckhoff Automation(以下、ベッコフオートメーション)とデンソーウェーブは、両社が共同開発した次世代ロボットコントローラー「RC9」に関するテクニカルセミナーをオンラインで開催した。RC9の製品コンセプトである選択性やオープン性の他、プログラミング技術の習熟度に関わらず制御を行えるようにする「簡単化」などの内容を具体的に解説した。
Beckhoff Automation(以下、ベッコフオートメーション)とデンソーウェーブは2020年6月18日、両社が共同開発した次世代ロボットコントローラー「RC9」に関するテクニカルセミナーをオンラインで開催した。RC9の製品コンセプトであるオープン化などを説明した他、技術の習熟度に関係なく開発環境を誰にでも使いやすくする「簡単化」の構想も取り上げて解説した。
多様化するロボットニーズに対応
RC9は産業用PC(IPC)にインストールするファームウェアとして提供されるロボットコントローラーだ。従来はCPUと産業用ロボットのドライバーを一体化させたオールインワン型のコントローラーが主流だったが、このうちCPUをベッコフオートメーション製のIPCに置き換えることを基本コンセプトとしている。これにより顧客が求める性能に応じた仕様のIPCを自由に選択できるようになった。同時に、PCベース制御技術である「TwinCAT」をIPCに搭載することで、ロボットのリアルタイム制御も実現する。
RC9開発に至った背景について、デンソーウェーブ FA・ロボット事業部 製品企画室の澤田洋祐氏は「近年、産業用ロボットを導入する業種が広がりつつあり、それに応じて顧客のニーズも多様化している。2012年にリリースしたRC8では、これらのニーズ全てに応えることは困難だった。そこで新しく構想したのがRC9だ。顧客自身が状況に応じてIPCを選択できるようにする、というコンセプトなどを軸に開発がスタートした」と振り返る。
この他にもRC9にはいくつかの特徴がある。その1つが開発環境の「オープン性」だ。
RC9では前身となるRC8で実現したオープン性の高いロボット開発環境をそのまま継承している。OSにはWindowsを採用し、ミドルウェアのORiN、仮想環境構築用のエミュレータ「VRC(Virtual Robot Controller)」と併せて構成することで、C++など汎用プログラミング言語を用いたロボット開発を実現する。この他、設備開発言語PacScriptでの開発も可能だ。「従来、制御のリアルタイム性を担保しつつオープン性を実現するのは困難だった。だがRC9ではベッコフオートメーションと協業することで、非リアルタイム層のWindows層とリアルタイム層のTwinCAT層を分けた。これによりユーザーが自らロボット開発を行える上に、リアルタイム性も担保できるという開発環境を実現している」(澤田氏)。
またRC9は複数台のロボットを統合制御することも可能だ。「RC9は自身をマスターにしてロボットのIPCに接続できる。1台目のロボットにつなげた後は、2台目以降のロボットにも接続可能で、各ロボットのモーターを制御することが可能になる」(澤田氏)。
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