オープン化だけじゃない、「RC9」は産業用ロボット開発の「簡単化」も目指す:産業用ロボット(2/2 ページ)
Beckhoff Automation(以下、ベッコフオートメーション)とデンソーウェーブは、両社が共同開発した次世代ロボットコントローラー「RC9」に関するテクニカルセミナーをオンラインで開催した。RC9の製品コンセプトである選択性やオープン性の他、プログラミング技術の習熟度に関わらず制御を行えるようにする「簡単化」などの内容を具体的に解説した。
エンジニアリングコスト低減のための「簡単化」
従来のロボットコントローラーに比べて多様な顧客ニーズに応えることが期待されるRC9。しかし、澤田氏はIPCを自由に選べるという「選択性」やオープン性といったRC9の特徴だけでは解決しきれない課題が残されていると指摘する。それは、プログラミングなどロボットのエンジニアリング工程をいかにして簡単なものにするか、という問題だ。
「ロボットシステムのコストシェアはエンジニアリング費用が58%、購入費が28%程度を占めている。つまりいくらロボットの購入コストを下げても、エンジニアリングの費用を低減しなければ、効果的なロボットシステムのコスト削減が望めない。そこで、RC9の強みを生かしてエンジニアリングをできるだけ『簡単化』するための提案ができないかと考えている。元から高度なプログラミングが行えるというユーザーだけでなく、設備には通じているがプログラミングが不得手という人も含めて、簡単に使える開発環境を提供していきたい」(澤田氏)
そこでデンソーウェーブがRC9と同時期にリリースしたのが、オフラインプログラミングソフトウェア「WINCAPS Plus」だ。澤田氏は「ロボットのセットアップ、プログラミング、ティーチングといった、ロボットのライフサイクルに合わせて最適な開発環境を提供することを目指している」と語る。
WINCAPS Plusには現在、5つのアプリケーション機能が搭載されている。例えば、画面上で表示されるロボットの動きを確かめながらプログラミングができる「3D Visual programming」や、動作途中から安全な初期位置に自動で戻る「原点復帰ガイダンス」などだ。「ユーザーがさまざまな状況に合わせて最適な開発環境を選べるようにしたい。将来的なアプリケーション数は100個以上にも到達するかもしれない」(澤田氏)。
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