協働ロボット普及のカギは「用途別パッケージ」、2020年は“第3の道”にも期待:MONOist 2020年展望(1/3 ページ)
人口減少が加速する中、製造現場でも人手不足が深刻化している。その中で期待を集めているのがロボットの活用だ。特に協働ロボットの普及により人と同一空間を活用し新たな用途開拓が進んでいる。2020年はこれらの技術進化による普及が本格的に進む一方で、「人」との親和性をさらに高めた“第3の道”の登場に期待が集まっている。
人口減少が加速する中、製造現場でも人手不足が深刻化している。特に日本は世界最悪の人口減少局面を迎えており、中長期的に労働人口が減り続けることは避けられない状況だ。
特にその中でも製造業の労働者数の減少傾向はさらに厳しいといえる。国内の就業者総数はリーマンショック以降回復傾向となっているが、製造業に限っては下げ止まりの状況が続いているからだ。
実際に人材確保の状況もここ数年でさらに悪化している。「2019年版ものづくり白書」の製造業調査によると「大きな課題となっており、ビジネスにも影響が出ている」とした回答者は、2016年の22.8%から、2018年度は35.7%へと増加。一方で「特に課題はない」とした回答者は、2016年度は19.2%だったのに対し、2018年度は5.2%へと減少しており、95%の人が既に人材確保についての何らかの課題を感じている状況になるといえる。
こうした状況の中で、期待を集めているのがロボットによる自動化である。人手を使って作業を行うのが今後ますます難しくなることが予測できる中で、人でなくてもよい領域は積極的にロボットに担わせようという動きだ。その中でも特に期待を集めているのが、人と同じ空間で作業を行える「協働ロボット」である。
人と共に働く利点を訴求
従来の産業用ロボットは、安全性の問題から人と同じ空間で作業できない規制があり、柵などで空間を切り分ける必要があった。そのため、製造現場などで使用する場合、配置が大掛かりなものとなり、さらに柔軟にラインを組み替えるようなことには不向きだった。しかし、技術進化により人と同じ空間で使用する場合でも安全性を確保できるようになったことから規制緩和が進み、「協働ロボット」への期待が高まってきたという流れである。
既に日本で見ても2013年12月に協働ロボットについての労働安全衛生規則の規制緩和が行われてから約6年、日本工業規格(JIS)の制定や改定が行われてから約5年が経過している状況である。しかし、現実的には協働ロボットの普及はまだまだ黎明期という状況だといえる。「協働ロボットの使い道」を見つけ出すのが意外に難しいからだ。
協働ロボットと従来型の産業用ロボットに比べると、精度が低く動作も遅いというマイナス点を抱えている。その一方で「人と同じ空間を共有できる」という点に加え、柔軟にラインの変更ができるなどのプラスの点がある。また、協働ロボットと人間を比べると、柔軟性がなく、動作速度などが遅いというマイナス点を抱えている。一方で、疲れずに24時間稼働できるというプラス点がある。
これらのプラスの点を組み合わせた領域で、最適な用途を見つけ出すということが必要になるのだが、製造現場の中においてもなかなか最適な用途を見つけるのが難しかった。協働ロボット自体の製品バリエーションが少なく、今までは従来型ロボットと比べても人と比べても可搬能力が足りないというような状況もあり、制約が非常に大きな状況だったといえる。
こうした中で製造現場では用途の模索を進めてきたというのが実情である。ただ、2018年〜2019年でこうした状況も徐々に整理が進んできており、以前から産業用ロボットを使用してきた工場などでは、従来型の産業用ロボットでカバーできなかった領域で協働ロボットを使うという枠組みが出てきている。具体的には、作業間搬送におけるワークの移動や、簡易組み立てなどで使用するケースが多くなっている。また物流現場などでの使用も進んでおり、まだまだ少ないが使える用途が見え始めてきたという状況がある。
さらに、ラインアップの拡充や機能拡張なども進んできている。既存メーカーが可搬能力の高いモデルも徐々に増加しつつある他、三菱電機が2020年前半に製品投入を発表するなど、新規参入企業の増加によりロボットの選択肢が増えつつある。プレイヤーの増加により、2020年も順調に市場を拡大することが予想できる(※)。
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