事例で振り返る協働ロボットの使いどころ:いまさら聞けないスマートファクトリー(14)(5/5 ページ)
成果が出ないスマートファクトリーの課題を掘り下げ、より多くの製造業が成果を得られるようにするために、考え方を整理し分かりやすく紹介する本連載。第14回では、「使いどころを探すのに苦労する」という声の多い協働ロボットについて、実際の事例をベースに紹介します。
協働ロボットを使うために作り方を変える
他にも適用するための考え方はありますか。
協働ロボットの活用を本気で広げていくのであれば、作り方を協働ロボットに合わせて作るというのも選択肢の1つではあるわ。それができれば、多くの場所に協働ロボットを適用できるようになるわ。
協働ロボットに合わせて全く新しい工程の仕組みを作るということですか。
そうね。ロボットは基本的にプログラムされた通りにしか動けないので、動作プログラムのパターン、ハンドの種類などでバリエーションを作る必要があるわ。それに必要な治具や仕組みを作って、協働ロボット中心に作業を担わせるという形ね。OKIの富岡工場では、協働ロボット2台を組み合わせて多様な組み立て作業を自動化しているわ。
OKI 富岡工場では、金融向け自動機や流通向けの現金処理機などの製造を行っています。これらは顧客ごとのカスタムも多く、少量多品種生産となります。そのため、産業用ロボットなどによる自動化には不向きで、従来は人手による組み立て作業で、需給への柔軟な対応を実現してきました。これを協働ロボットに置き換えて作業負荷軽減を進めてくという流れです。
具体的には「外観検査」「ネジ締め」「はめ込み」「Eリング止め」「ピン打ち」「ばね引っ掛け」「銘板貼り付け」などの作業を進めています。協働ロボット2体と制御PC、組み立て作業台を組み合わせた共通モジュールを用意し、これらを共通基盤とします。そして、個別の作業については着脱可能な専用の台車に、部材や工具などを設置して提供することで、台車をトリガーとしてプログラムを切り替えながらロボットが作業を行うことができるようにしています。基本的には作業そのものはロボットに任せ、人は工程全体のケアやサポートに回るという発想です。
確かに「この工程は絶対自動化する」というように考えると、実現するための方法はいろいろと考えられそうです。
従来は費用対効果などが壁になって進められなかったところも、コロナ禍も含め人手の確保がますます難しくなる中で、人手に頼り切った生産からの脱却が求められる部分が出てきているわ。そういう変化を踏まえた上で、コストやリソースを考えると従来はできなかったこともできるようになるかもしれないわね。
なるほど。よく分かりました。ありがとうございます。教えてもらったヒントを基に、グーチョキパーツの中でもどこで使えるのかというのを検討してみます。
さて今回は「使いどころを探すのに苦労する」という声の多い協働ロボットについて、発想のヒントを紹介してきました。ちなみに今回紹介した事例は、全てMONOistで記事化しているものですが、取り組み内容は取材時点のものですので、現在の取り組みとは変わっているかもしれません。そこだけご注意いただければと思います。次回も、製造現場において失敗するパターンや見過ごされがちなポイントについてさらに掘り下げたいと考えています。
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