コロナ禍で進んだ「リモート工場」、何ができて何ができないのか:いまさら聞けないスマートファクトリー(13)(1/4 ページ)
成果が出ないスマートファクトリーの課題を掘り下げ、より多くの製造業が成果を得られるようにするために、考え方を整理し分かりやすく紹介する本連載。第13回では、コロナ禍で注目度が高まった生産のリモート対応について解説していきます。
スマートファクトリー化は製造業にとって大きな関心事であるにもかかわらず、なかなか成果が出ない課題を抱えています。本連載では、スマートファクトリーでなかなか成果が出ないために活動を縮小する動きに危機感を持ち、より多くの製造業が成果を得られるように、考え方を整理し分かりやすく紹介しています。第13回となる今回は、前回も少しだけ触れましたが、コロナ禍でクローズアップされた「生産のリモート対応」についてポイントや事例を解説していきます。
本連載の趣旨
本連載は「いまさら聞けないスマートファクトリー」とし、スマートファクトリーで成果がなかなか出ない要因を解き明かし、少しでも多くの製造業がスマートファクトリー化で成果が出せるように、考え方や情報を整理してお伝えする場としたいと考えています。単純に解説するだけでは退屈ですので、架空のメーカー担当者を用意し、具体的なエピソードを通じてご紹介します。
架空企業の背景
従業員300人規模の部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長である矢面辰二郎氏はある日、社長から「第4次産業革命を進める」と指示され途方に暮れます。そこで、第4次産業革命研究家の印出鳥代氏に話を聞きに訪問し、さまざまな課題に立ち向かいます。
本連載の登場人物
矢面 辰二郎(やおもて たつじろう)
自動車部品や機械用部品を製造する部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長兼IoTビジネス推進室室長。ある日社長から「君、うちも第4次産業革命をやらんといかん」と言われたことから、どっぷりのめり込む。最近閉塞感にさいなまれている。
印出 鳥代(いんだす とりよ)
ドイツのインダストリー4.0などを中心に第4次産業革命をさまざまな面で研究するドイツ出身の研究者。インダストリー4.0などを中心に製造業のデジタル化についてのさまざまな疑問に答えてくれる。サバサバした性格。
*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。
前回のあらすじ
さて、前回のおさらいです。第12回の「製造現場に広がる『画像』や『映像』の活用、何に生かすべきか」では、スマートファクトリー化を進める中で活用が広がっている「映像」「画像」の使いどころについて紹介しました。
カメラの高性能化や低価格化、AI(人工知能)などを含む認識技術の進化により、製造現場で「画像」や「映像」を活用してできることは大幅に増えています。その活用のポイントして印出さんは4つのポイントを挙げていました。
製造現場の画像活用には「G」「I」「G」「I」の4つの領域があるといわれているわ。
4つの領域というのは「Guidance(位置決め)」「Identify(認識)」「Gauge(寸法計測)」「Inspection(検査)」ということでしたね。画像や映像を使ってモノの位置を正確に把握する位置決め、文字やバーコードなどを使った認識、寸法計測、そして、これらの機能を活用した検査というわけです。従来は専用の機器やセンサーなどを用いたり、それらを用意することが難しい場合は人手で測定したりすることで補ってきましたが、これらの活用により自動化できる領域が広がったということになります。
なるほど「位置決め」「認識」「寸法計測」「検査」の領域で、人手作業の負担が大きくて困っていた領域をターゲットにすればよさそうですね。
また、こうした「画像」「映像」による価値は、コロナ禍で移動が制限され、実際にその場に人が行けない状態になる中でより有用性が増しているという話を紹介しましたね。
さて、今回は、こうした前回の流れを受け、コロナ禍で一気に進んだ工場の遠隔監視や遠隔サポートなど「工場のリモート化」について、そのポイントを紹介します。
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