モビリティとIoTセンシングを新たな成長のカギに、ソニーの経営戦略:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
ソニーグループは2021年5月26日、経営方針発表会を開催。ソニーグループと直接つながる人を現在の1億6000万人から10億人に拡大する他、「モビリティ」と「IoTセンシング」領域の技術開発を強化し、新たな価値創出を目指す方針を示した。
「モビリティ」と「IoTセンシング」領域を新たに開拓
これらを踏まえ、今後の取り組みとしては、「感動」やソニーが進む方向性(Purpose)としての「人に近づく」を基軸としつつ、「クリエイティブ」「テクノロジー」「世界」というキーワードで新たな取り組みを進める。ここでは特に「テクノロジー」での取り組みについて紹介する。
ソニーでは「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」という目標を掲げており、テクノロジーについても「感動」を生み出すコンテンツクリエーションに関係する「クリエーションテクノロジー」と、これらをユーザーが体験する「体験テクノロジー」の2つに注力する。
「クリエーションテクノロジー」としては、コアとなるCMOSイメージセンサーの強化を進める。積層技術を生かしてモバイル向けCMOSイメージセンサーのさらなる進化に取り組む他、多用途での展開を強化する。その他独自機能を強化したデジタル一眼カメラや、画像判定支援システム「Hawk-Eye」、クリエイティブ用途専用のドローン「Airpeak」、バーチャルプロダクション領域の強化などを推進する。
「体験テクノロジー」としては、2020年に発売したPlayStation 5(PS5)の展開を強化する他、新たに次世代VRシステムの開発を進めているという。「PS VRでの知見を生かしながら最新センシング技術を盛り込む」(吉田氏)。また、ゲーム体験強化のために、2020年に設立したSony AIとPlayStation分野において協業を進める。AIの強化学習を活用し、プレイヤーの対戦相手もしくはパートナーとなるゲームAIエージェントの開発を進めているという。
また、モビリティについての強化も推進する。ソニーでは2020年のCESでEVの試作モデル「VISION-S Prototype」を発表し、公道走行テスト、高速走行下での5Gを用いた通信の実証実験などを進めている。探索領域として開発を進め、車載センシング技術により、モビリティの進化に貢献していく方針だ。
2014年にソニーとして初の車載カメラ向けCMOSイメージセンサーの商品化を発表し、フロントセンシングをはじめカメラによる車外センシング、車内センシング、LiDARなどの研究開発を進めてきた。「こうした活動は実を結びつつあり、今後数年の時間軸でモビリティの安全領域で貢献できる機会が増えつつある」(吉田氏)。
また、車載以外のIoTセンシング領域にも積極的に進出する。ソニーではCMOSセンサーの積層化技術を強化しており、AIロジックチップと画像チップを一体化し、エッジでの情報処理をより容易に行えるようにしている。これにより「リテールなどでのスマートカメラをはじめとしたソリューションの構築や実証実験を着々と進めている」(吉田氏)。
その他、DTCの強化により、現在世界で1億6000万人とエンタテイメントを中心につながっている状況を10億人に拡大することを目指す。「この10億人の動機に近づきつながることをソニーグループの今後の成長につなげていきたい」と吉田氏は語っている。
関連記事
- 川崎重工とソニーが遠隔操作ロボットサービスを提供する新会社設立
川崎重工業とソニーグループは2021年5月21日、ロボットを遠隔地から操作する環境を提供するリモートロボットプラットフォーム事業を展開する新会社を2021年夏に合同で設立すると発表した。新会社では遠隔操作に対応するロボットのソフトウェアやソリューションサービスを提供する。 - ソニーは最終利益1兆円超えでも慎重に、2021年度は減益見通し
ソニーは2021年4月28日、2021年3月期(2020年度)の業績を発表。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を逆に追い風とし、売上高、営業利益、純利益などの主要指標で過去最高を達成する好業績となった。 - 新型コロナでもソニーの基軸は「人」、イメージング&センシングでNo.1目指す
ソニーは2020年5月19日、2020年度の経営方針説明会を開催した。次世代機PS5の市場投入が期待されるゲーム関連事業に加え、マイクロソフトとの協業を発表したセンシング事業などの説明を行った。 - ソニーがイメージセンサーで次に起こすブレイクスルー
さまざまな映像製品に革新をもたらし続けているソニーのCMOSイメージセンサー。「自分越え」の革新を続けるその裏側には何があるのか。革新製品の生まれた舞台裏を小寺信良氏が伝える。 - ソニーが描く“走るコンピュータ”としてのクルマ
アマゾン ウェブ サービス(AWS)は2020年9月8〜30日、オンラインでのユーザーイベント「AWS Summit Online」を開催。その中の特別講演として、ソニー AIロボティクスビジネスグループ 執行役員の川西泉氏が登壇し「VISION-S プロジェクト:ソニーのモビリティに対する取り組み」をテーマに、同社が2020年1月に技術見本市「CES」で発表した次世代自動車プロジェクトの概要や今後の挑戦について紹介した。 - ソニーが出願数で世界8位に上昇、2020年の欧州特許調査レポート公開
欧州特許庁(EPO)は2021年3月16日、2020年のEPOへの特許申請動向を国、企業、技術別に分析したレポートを公開した。全体の出願数は18万250件で2019年と比較すると0.7%減少。日米などは出願数が減少したが、韓国と中国からの申請数は増加した。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.