川崎重工とソニーが遠隔操作ロボットサービスを提供する新会社設立:製造マネジメントニュース
川崎重工業とソニーグループは2021年5月21日、ロボットを遠隔地から操作する環境を提供するリモートロボットプラットフォーム事業を展開する新会社を2021年夏に合同で設立すると発表した。新会社では遠隔操作に対応するロボットのソフトウェアやソリューションサービスを提供する。
川崎重工業とソニーグループは2021年5月21日、遠隔操作ロボットを主軸としたリモートロボットプラットフォーム事業を展開する合弁会社を同年夏に設立する。新会社では遠隔操作に対応するロボットのソフトウェアや、遠隔操作ロボットを用いたソリューションサービスを提供する。
遠隔操作ロボットのソフトウェアなどを提供
新会社は東京都港区のソニーグループ本社内に置く予定。資本金は1億円で、川崎重工業とソニーグループが50%ずつ出資する。代表取締役社長にはソニーグループの田中宏和氏が、代表取締役副社長には川崎重工業の長谷川省吾氏が就任する。社名については現時点では公表されていない。
川崎重工業はロボティクス事業や陸海空のモビリティ事業で培った技術力に強みを持つ。2020年11月に発表した「グループビジョン2030」の中では、今後注力する社会課題領域の1つとして「安全安心リモート社会」を挙げており、具体的には、手術支援ロボットなどの「医療/ヘルスケア」分野や「災害対応」分野、遠隔操作技術を活用した「新しい働き方/暮らし方」分野などで技術活用を進めている。
一方で、ソニーグループは画像処理やセンシング、通信技術に強みがある。リアリティー(Reality)、リアルタイム(Realtime)、リモート(Remote)の各分野に関わる技術であることから、これらを「3Rテクノロジー」と位置付けて、同分野での新たな事業価値創出を目指している。
新会社では両社の技術を併せ、ロボットを遠隔地から操作するリモートロボットプラットフォームの構築を図る。事業としては、ロボットのソフトウェアやソリューションサービスの提供が主軸となる予定。遠隔操作ロボットを活用することで、危険な作業環境や重労働が求められる作業現場などでも作業者の安全を確保でき、また、作業負荷を大幅に軽減できる可能性がある。
また、自宅などからも遠隔作業が可能になるため、さまざまな事情で現場から離れていた人にも新たな雇用機会を提供し得るとしている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって働き方が大きく変化する中、場所や時間に制限されない新しい働き方を提案することにもつながる。
新会社の今後については、製造加工業などでの実証実験を経て、2022年中にはサービスを開始する予定だという。
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