ソニーがクルマを作ったのは「車両のシステムアーキテクチャまで理解するため」:CES2020
ソニーは消費者向けエレクトロニクス展示会「CES 2020」(2020年1月7〜10日、米国ネバダ州ラスベガス)において、同社の技術を盛り込んだコンセプトカー「VISION-S(ビジョン エス)」を披露した。車両の周囲や車内のセンシング技術、ディスプレイ、オーディオ技術などを搭載し、内外装も独自にデザインした。ソフトウェアを中心とし、通信よってアップデートし続けられる「アダプタビリティ」も取り入れているという。
ソニーは消費者向けエレクトロニクス展示会「CES 2020」(2020年1月7〜10日、米国ネバダ州ラスベガス)において、同社の技術を盛り込んだコンセプトカー「VISION-S(ビジョン エス)」を披露した。車両の周囲や車内のセンシング技術、ディスプレイ、オーディオ技術などを搭載し、内外装も独自にデザインした。ソフトウェアを中心とし、通信よってアップデートし続けられる「アダプタビリティ」も取り入れているという。
コンセプトカーの開発は2018年春から開始。マグナの子会社で完成車の受託生産を行うマグナ・シュタイヤーをはじめ、BENTELER、Blackberry QNX、ボッシュ、コンチネンタル、エレクトロビット、ジェンテックス、HERE、マグナ、NVIDIA、クアルコム、ZFらが車両としてのエンジニアリングをサポートした。
現時点では車両の販売予定はなく、こうした協力も生かしながら車両全体への理解を深め、自動車業界の次世代自動車開発に貢献する考えだ。
安全からインフォテインメントまで
ソニーは次のメガトレンドがモビリティであると位置付け、運転の安全性向上とエンターテインメント、アダプタビリティを重要視する。安全性向上ではイメージセンサーで採用実績を増やしている。VISION-Sには、ソリッドステートLiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)、車内モニタリングやジェスチャー操作に使用するToFカメラも搭載。電子ミラーなども含め、車内外に33個のセンサーが使われているという。センシング性能の発揮と車両デザインの両面からセンサーの取り付け位置を検討した。
さらに、センサーフュージョンを高精度化するための「アーリーセンサーフュージョンエンジン」も開発する。カメラやミリ波レーダーなどセンサーごとに物体を検出し、複数のセンサーの検出結果を統合処理する従来の手法に対し、異なる方式のセンサーのローデータを合成したあとに物体検出を行うことで精度を高めるとしている。
エンターテインメントでは、横長の大画面ディスプレイや後部座席向けディスプレイ、没入感のある立体的な音場を提供する「360 Reality Audio(サンロクマル・リアリティーオーディオ)」を車両に搭載。自動車は新しいエンターテインメント空間になると見込む。また、地図データのHEREとの協力を生かし、手動運転中や自動運転中にエンターテインメントだけでなくコックピットとしてどうあるべきか、検討していくという。
自由な価値提供は、安心安全を理解してこそ
車両全体への理解を深めることは、エンターテインメントで移動時間を豊かにすることにつながるという。「事故がなく安全であることに加えて、穏やかで不安のない安心した乗り心地があって、初めて移動中にエンターテインメントに意識を向けることができる。クルマとして試作してみて、運転とエンターテインメントに最適な連携が必要であることの実感が深まった」(ソニーの説明員)。
サプライヤーがコンセプトカーや、開発中の技術を組み込んだ実験車両をつくることは珍しくない。ソニーはインフォテインメントシステムだけを試作することもできた。しかし、次世代のクルマの在り方を考え、自由な価値を提供していく上では、自動車に要求される安全性や規制を理解し、踏襲する必要があるという思いから車両として開発したという。
ソニーは、車両のシステムアーキテクチャや車載ソフトウェアへの理解も深めようとしている。インフォテインメント系だけでなく、“走る曲がる止まる”も対象だ。
「複雑なシステムアーキテクチャをシンプルにしたり、高性能にしたりするのは、ソニーがこれまでにもやってきた。クルマづくりを理解すれば、複雑化が進む自動車のシステムアーキテクチャに貢献できることもあるのではないか。“走る曲がる止まる”は自動車業界のこれまでの資産があり、いきなり変えることはできないが、次はこうするとシンプルになる、効率的になる、安全になるという将来を描きつつ、フィロソフィーとして取り入れておきたい。“走る曲がる止まる”をソニーがやるかやらないかは別にして、知らないと何もできない」(ソニーの説明員)
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