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どうして今、自動車にモデルベース開発が必要なんだろう今だからこそ!モデルベース開発入門(1)(1/3 ページ)

モデルベース開発という言葉は、自動車業界にとって決して目新しいものではありません。今さら何を解説しようというのか、と思われる方も多いことでしょう。しかしここ数年で、自動車業界全体でモデルベース開発の「活用、流通」という言葉をよく耳にするようになりました。自動車開発のキーワードの1つになっていると言っても過言ではありません。

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前書き

 モデルベース開発という言葉は、自動車業界にとって決して目新しいものではありません。今さら何を解説しようというのか、と思われる方も多いことでしょう。しかしここ数年で、自動車業界全体でモデルベース開発の「活用、流通」という言葉をよく耳にするようになりました。自動車開発のキーワードの1つになっていると言っても過言ではありません。

 そこで、モデルベース開発とは何か、何ができるのか、何が変わるのかについて取り上げることは意義のあることと考え連載を企画しました。本連載の執筆にあたり、貴重な助言、情報を多くの方々からいただいています。この場をお借りし、深く感謝申し上げます。

 なお、この物語に登場する人物、企業、製品名などは全て架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

企画:自動車技術会 会誌編集委員会

企画監修:白坂成功氏(慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 教授)

企画協力:自動車産業におけるモデル利用のあり方に関する研究会(経済産業省主催)、
     自動車技術会 国際標準記述によるモデル開発(MBD)技術部門委員会、
     自動車技術会 自動車制御とモデル研究部門委員会

→連載「今だからこそ!モデルベース開発入門」バックナンバー

八木崎、弱音を吐く

 その日、八木崎亮は盛大に弱音を吐いていた

武里さん、クルマづくりって本当に難しいですね。もちろんそれだけに目標が達成できた時の喜びも大きく、またやりがいもあるんですけど……。


 八木崎の勤める五本木工業は、東京に本社を構える中堅サプライヤーで、自動車関連部品を設計、開発から製造、販売まで行っている。電動化への対応を事業戦略の1つに据えており、駆動用モータやモータージェネレータといった製品群を強化している。五本木工業の取引先である自動車メーカー、亜細亜自動車は6年後の発売に向けて新型車「ロンターノ」の開発を開始し、五本木工業もロンターノ向け製品開発に取り掛かろうとしていた。

八木崎、一体どうしたんだ? この前会った時は、新しい仕事に取り掛かるというので、元気はつらつとしていたが。


 八木崎の話を聞くのは、大学の先輩だった武里駿。自動車メーカーのアトランティックモーターで働いている。2人は大学を卒業した後も交流が続いており、近況を知らせたり、仕事の悩みを共有したりしていた。八木崎は最近の仕事量の増加になかなか追い付けずに悩んでいる。話を聞いてもらおうと武里と会うことにしたのだ。

試作品作って実機ですり合わせて、何回か手戻りして、どうしてこうなるのか検証しても原因の特定が難しく、それでようやくこのあいだの新型車の燃費目標とコストをクリアできた状況です。それが、これからさらに複雑なシステムになると、一体どうしたらいいんだろう。


まあ、環境規制対応ってそういうところがあるのは仕方ないよ。どこの会社だって苦労している。


 八木崎は頭を抱えた。新型車「ロンターノ」は亜細亜自動車の主力製品の1つである量販車種だ。203X年に想定される欧州の環境規制をクリアすることが最大の使命で、従来モデル以上に電動化を進め、パワートレイン全体の効率化を図る方針となっている。量販モデルなのでコストの制約も厳しい。

 加えて、「パワートレインの全面刷新を機に、ウチに合わせてモデルベース開発をやってほしい」という強い要望が亜細亜自動車から五本木工業に寄せられているのだ。

詳しくは言えないんですが、「モデルベース開発をやってほしい」という要望が来てるんです。シミュレーションやCAE、3D CADと何が違うんだろう、全部会社でやってるんだけどな! 制御開発ツールだって取引先と同じベンダーのものを導入しているのに。上司や営業からは「モデル活用頑張れよ」って言われるけど、もしかすると上司や営業もあまり分かっていないかもしれないなあー!


 八木崎は思わず声が大きくなる。

まあまあ、落ち着いて。


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