パナソニックは減収減益も低収益事業からの脱却にめど、津賀体制の有終は手堅く:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
パナソニックは2021年5月10日、2020年度(2021年3月期)連結業績を発表した。売上高は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で減収となったものの、2020年度第3四半期決算時に発表した修正公表値を上回る着地となり調整後営業利益では増益を達成。同年6月に代表取締役社長を退任する予定の津賀一宏氏による体制では最後の決算発表となるが掲げてきた「低収益事業からの脱却」に一定のめどが立った形となる。
2021年度は増収増益、全セグメントで増益へ
2021年度(2022年3月期)の連結業績見通しについては、売上高は前年度比4%増の7兆円、調整後営業利益は同27%増の3900億円、営業利益は同28%増の3300億円、税引き前利益は同27%増の3300億円、当期純利益は同27%増の2100億円を予測する。さらに全セグメントで増益を見込む。
梅田氏は「2020年度の第1四半期の大きな落ち込みが通常レベルに戻ったと見れば保守的な目標に見えるかもしれないが、例えば、銅の価格高騰など、さまざまな原材料の高騰が現在起きている。また、半導体の需給ひっ迫なども続く見込みで、こうしたリスクを織り込んだ上での業績見込みだ。原材料高騰については、現在が異常な状況だと認識しており、下期には少し戻ると想定している」と語っている。
セグメント別では、AMセグメントで自動車市場の回復などを受け、車載機器が伸長する他、円筒形車載電池の北米や国内の高容量新製品への切り替え完了による増産、北米新ライン稼働で増収増益を見込む。また、直径46×長さ80mmの「4680」と呼ばれる新型円筒形電池の開発も推進。「開発は順調に進んでいる。現在は手作りで行っている状況だが、2021年度の早いタイミングで研究検証ラインを設置し、試作や能力、安全性の検証を行う計画だ。研究検証ラインの設置は日本国内に設置することは決まっている。ただ、場所は住之江工場あたりだと想定はしているが、まだ明確化できない」と梅田氏は語っている。
「社会と呼吸しお役立ちを実現するのが経営の役割」
2020年度は、9年間CEOを務めた津賀氏が経営責任を持つ最後の年度となるが、津賀氏は「気が付けば9年やってきた。できたことやできなかったことなど、最初から分かっていたことはなく、走りながら対応してきた。就任期間は競争環境の変化で事業が痛んでいた部分が明らかになった時期だった。また、最近の動きを見ると、社会の変化が事業に求めることを変えていく動きもある。そういう意味で、この9年間で強く感じるのは、社会と共に呼吸をし、お役立ちを実現するのが経営だということだ」と語っている。
さらに津賀氏は「従来のパナソニックは日本を中心にした家電、テレビの会社だった。それを、くらし密着で白物に軸足を移して、地に足の付いたグローバル経営へと舵を切った。こうしたことを手探りで進め、その結果として今の変化がある。何かができて、できなかったということではなく、ただ続けてきて次の世代にバトンを渡すことができた。それだけで『できた』と感じている。ただ、次のCEOには『(前のCEO時代に)できなかったことは山積みである』というスタンスに立ち、改善に次ぐ改善を進めていってもらえればよい」とCEOに就任した楠見雄規氏にエールを送っている。
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