パナソニックが狙う“暮らし”と“現場”、2つのプラットフォーマーへの道:製造業×IoT キーマンインタビュー(1/4 ページ)
「Society4.0にうまく適合できなかった」と危機感を示すパナソニック。ソフトウェア開発体制の強化など、Society5.0時代に向けてさまざまな変革を進める。パナソニックが新たに変革すべきところ、強みとして残すべきところはどういうところになるのだろうか。パナソニックのイノベーション推進部門を統括する専務執行役員である宮部義幸氏に話を聞いた。
日本政府が新たな社会の姿として訴える「Society5.0」。これは、狩猟社会(Society1.0)、農耕社会(Society2.0)、工業社会(Society3.0)、情報社会(Society4.0)に続く、5番目の社会の姿として「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立させる、人間中心の社会」だとされている。
こうした社会の変遷の中で「Society3.0時代にはうまく適応したが、Society4.0時代にはうまく対応できなかった」と危機感を募らせるのがパナソニックである。パナソニックでは「Society5.0」を新たなチャンスと捉え、技術開発の体制整備や社内組織の変革に急ピッチで取り組んでいる。
パナソニックが変えるべきだと考えているところ、変えてはいけないと考えているところはどういうものなのだろうか。パナソニックのイノベーション推進部門を統括する専務執行役員で、CTO(チーフテクノロジーオフィサー)、CMO(チーフマニュファクチャリングオフィサー)、CPO(チーフプロキュアメントオフィサー)、CIO(チーフインフォメーションオフィサー)を兼任する宮部義幸氏に、MONOistとEE Times Japan(以下、EETJ)が共同インタビューを行った。
本連載の趣旨
ITmedia産業5メディア総力特集「IoTがもたらす製造業の革新」のメイン企画として本連載「製造業×IoT キーマンインタビュー」を実施しています。キーマンたちがどのようにIoTを捉え、どのような取り組みを進めているかを示すことで、共通項や違いを示し、製造業への指針をあぶり出します。
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「パナソニックはSociety3.0で勝ってきた企業だった」
MONOist/EETJ パナソニックは2018年に100周年を迎え、これらを契機に“暮らしアップデート業”などさまざまな変革を打ち出しています。CTOの立場として今までのパナソニックとこれからのパナソニックで何を変えなければならないと考えているのでしょうか。
宮部氏 変革に取り組むのは100年だからというわけではなく、世の中の変革によるものだ。産業の変遷を見ていると、産業革命以降、大量生産、大量販売のモノづくりが進んできた。そして、その後これらの動きに「電気」による変革が加わり、パナソニックはこの流れに乗って、さまざまな価値を提供し成長してきた。こうした領域は将来的にもなくなりはしないが、大きく成長はしないと見るべきだ。
パナソニックのイノベーション推進部門を統括する専務執行役員で、CTO(チーフテクノロジーオフィサー)、CMO(チーフマニュファクチャリングオフィサー)、CPO(チーフプロキュアメントオフィサー)、CIO(チーフインフォメーションオフィサー)を兼任する宮部義幸氏
パナソニックの過去を振り返ってみても、1990年代までは右肩上がりで成長を続けてきた。しかし、それ以降の業績は上がったり下がったりを繰り返している状況だ。こうした状況を振り返ると、ちょうど1990年代を境に世の中が変化したと見るべきだ。1990年代以降で伸びた企業というのは、Society5.0で考えると、Society4.0(情報社会)を推進するIT企業だったといえるだろう。
1990年代以降でパナソニックが縮小したということではないが、1990年代や2000年代に伸びた企業はどこで、その伸び代がどこにあったのかを考えると、その流れはキャッチできなかった。次に成長することを考えれば、Society5.0の環境に向けて真剣に取り組む必要がある。これらをやらなければパナソニックが得意だった領域も奪われる可能性がある。ただ、ポジティブに捉えると、この動きを取り込めば、再成長できると考えている。
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