敗れた半導体露光機、予兆保全、そしてスマート工場、いろいろ捗った2018年:FA 年間ランキング2018(2/2 ページ)
2018年に公開したMONOist FAフォーラムの記事をランキング形式で振り返る。公開記事の1年間分のデータを集計した上位記事とそこから見えるFA業界の状況について紹介する。特徴的なのはスマート工場の事例が大きく増えてきたことだ。
4〜10位の記事
第4〜10位については、以下のランキング表を確認していただければと思います。3位までのランキングでは見えにくいですが、5位と7位、8位、10位で、スマート工場への事例がランクインしており、これらの実際の工場事例が一気に増えたのが2018年の特徴です。
2017年以前は概念的なものやこれからの取り組みの方向性の話が多かったのですが、実際に工場内に適用し成果を出しているという動きが進みました。2019年以降もさらに適用範囲が広がるとともに、「分析」「制御」「最適化」へとそれぞれの取り組みも深みを増していくと見ています。
MONOistFA2018年記事ランキングトップ10
- 半導体露光機で日系メーカーはなぜASMLに敗れたのか
- 故障予知は前提、“真の予兆保全”を実現するために必要になるもの
- スマートファクトリーはエッジリッチが鮮明化、カギは「意味あるデータ」
- 工作機械は“盛って”“つなげて”が当たり前に、JIMTOFプレビュー
- 安川電機が描くスマートファクトリーの3つの役割と現在地
- なんだこの異次元な動き、浮遊体で運ぶベッコフの新リニア搬送システム
- パナソニックを100年支え続けた事業とは? その強さの秘訣を探る(後編)
- スマート工場化で起こり得る課題、カシオがタイ工場で得たもの(後編)
- 三菱電機のFAシステム事業、2025年度に売上高1兆円の生産体制を構築へ
- スマート工場化で起こり得る課題、カシオがタイ工場で得たもの(前編)
自動化が進むからこそ重要な「人」の価値
10位以下で気になった記事としては、実は11位となっている「生産性3倍、リードタイムは6分の1、安川電機の新スマート工場が示すもの」を挙げたいと思います。
安川電機が考えたモノづくりコンセプトを体現する工場として建設されたスマート工場「安川ソリューションファクトリー」の記事ですが、安川電機独自の技術がふんだんに盛り込まれた先進工場です。ただ、全自動化やスマート化が進められただけではなく実際の生産性を確保するために随所に現実的な工夫が盛り込まれている点が非常に面白いと感じました。
コラムでも触れましたが、ロボットによる自動組み立てラインに対し、故障したときは人が代わって作業を行えるように設計されているという点は非常に興味深いと感じました。全自動化を進めると実はバッファーがなくなることで非効率になることもあります。その中で現実的なカタチに落とし込んでいくのかは今後も大きなテーマになってくると感じました。
2018年の総合トップは?
さて、ここまで2018年公開記事のランキングを見てきましたが、MONOist FAフォーラムの記事全ての中で2018年に最も読まれた記事は何なのでしょうか。
答えは「いまさら聞けない EtherCAT入門」になります。これは2016年、2017年に続いて、3年連続のこととなります。2016年公開記事の1位になった「トヨタが工場内ネットワークでEtherCATを全面採用、サプライヤーにも対応要請」で示された通り、トヨタ自動車をはじめ、多くの工場でEtherCAT採用の動きが多くの製造業でも注目を集めています。この動きの中で「EtherCAT」への注目は高止まりしているといえるでしょう。
ちなみに2位には「第4次産業革命って結局何なの?」が入りました。こちらは連載「いまさら聞けない第4次産業革命」の最初の概要を示した記事ですが、おかげさまで2018年12月までに28回を刻むことができています。第4次産業革命はジャーニー(果てしない旅)にも例えられる、長い期間が必要な変化です。その時々に必要な情報を引き続きタイムリーに発信できればと考えております。
さて、2018年もスマート工場化への動きは非常に強いものがありました。2019年はどのような1年になるでしょうか。MONOistでは2019年も引き続き、スマート工場を含む製造現場の将来像についてさまざまな角度で情報発信を続けていきます。
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