スマート工場を支える“現場力”に再注目が集まった2017年:FA 年間ランキング2017(1/2 ページ)
2017年に公開したMONOist FAフォーラムの記事をランキング形式で振り返る。公開記事の1年間分のデータを集計した上位記事とそこから見えるFA業界の状況について紹介する。2016年に続き、トップ10のほとんどがIoTなどスマート工場に関する話題となったが、工場での実導入の成果についての記事が増えていることが特徴だ。
製造機械やオートメーション業界にとって2017年は、インダストリー4.0やスマートファクトリーに関する取り組みが、実ビジネスにかなり近づいてきた1年だったといえるのではないでしょうか。
2014年頃から注目を集めてきたインダストリー4.0などの概念は、3年間を経てさまざまな課題をクリアしながら、現実に生かせる形に進化してきました。2017年3月には日本ならではの第4次産業革命コンセプトの「Connected Industries」なども発表され、日本の産業構造独自の領域も踏まえた発信なども進められるようになってきています。工場などでも数多くの実証が進められており、その内幾つかは実導入され成果を生みだすようになっています。
2017年のMONOist FAフォーラム記事ランキングも、これらの動きを象徴するように「スマート工場」の成功事例記事が数多くランクインしました。FAフォーラムで2017年に公開された記事の年間PVの上位記事とそこから見えるFA業界のトピックについて紹介します。
第1位:スマートファクトリーがいよいよ現実解へ、期待される「見える化」の先
2017年に公開した記事で最も多く読まれたのは「スマートファクトリーがいよいよ現実解へ、期待される「見える化」の先」となりました。
実は、この記事は年始に2017年を展望する「MONOist新年展望」として掲載されたもので、2016年末の状況をまとめつつ2017年のスマート工場化の動きの中でのトピックについて予想しています。記事では主に3つの点について言及しており、1つは「国際連携の広がり」、2つ目は「スマート工場標準化の動き」、3つ目が「見える化の普及とさらなる高度化」などについて紹介しています。いくつかズレている点もありますが、今回のランキングにもこれらの予想が反映された記事がランクインしています。
まだまだスマート工場の理想像の実現には道半ばですが、着実な歩みを刻んだ2017年だったといえるのではないでしょうか。
第2位:ついに三菱電機がオープン化へ、スマート工場実現に導くエッジ基盤提供
第2位には、FAの大手企業である三菱電機がエッジ領域のオープンな基盤作りを進める方針を示した「ついに三菱電機がオープン化へ、スマート工場実現に導くエッジ基盤提供」がランクインしました。
三菱電機では2003年から現場起点の情報を取得して生産性やコストの改善につなげるコンセプトの「e-F@ctory」を展開しており、インダストリー4.0などの動きに対しても「以前から取り組んでいる」というスタンスを取っていました。ただ、ICT(情報通信技術)の活用を、現場に近い領域でさらに深いレベルで進めていく状況になり、徐々にオープン化への動きを強めてきたという流れがあります。それが一気に形となったのが、この発表でした。
会見で三菱電機 常務執行役 FAシステム事業本部長 漆間啓氏は「三菱電機としても、メーカーや規格の壁を越え、オープンなプラットフォームが必要と考えた。囲い込みから一歩踏み出し、誰にでも使ってもらえる仕組みを提供することを目指す」と述べていました。“三菱電機の変化”を象徴的に示したという点で大きな注目を集めたといえます。
第3位:三菱電機のFA-ITオープンプラットフォーム構想が「Edgecross」に、2018年春発売
第3位にはまさに2位の記事の続報というべき記事「三菱電機のFA-ITオープンプラットフォーム構想が『Edgecross』に、2018年春発売」がランクインしました。
2017年11月に、エッジコンピューティングのための基本ソフトウェア「Edgecross」を推進する「Edgecrossコンソーシアム」が設立されました。これは、第2位の記事で紹介した「FA-ITオープンプラットフォーム構想」を発展的に解消し、三菱電機だけでなく、アドバンテック、オムロン、NEC、日本IBM、日本オラクルを加えて、エッジコンピューティングの基盤ソフトを構築するものです。
上位のITシステム、下位のセンシング領域は、多岐にわたるシステムが乱立している状況でこれらを効果的に結ぶにはエッジコンピューティングが重要だとされています。その技術的な基盤を共同で開発し、新たなビジネス基盤を作ろうというのが同コンソーシアムの狙いです。2017年は日本の製造業の強みはやはり「現場力」と「人」にあるということが再確認された1年となりましたが、それを技術的にも支えていく動きとして注目されたといえるでしょう。
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