IoT時代のゲームチェンジャーへ、ビジネス革新を進めるコニカミノルタの挑戦:MONOist IoT Forum 名古屋(前編)(2/2 ページ)
MONOistを含むITmediaの産業向け5メディアは、セミナー「MONOist IoT Forum in 名古屋 〜先進企業の事例からひもとく製造業『第4次産業革命』の今〜」を開催した。同セミナーのレポートを前後編に分けてお送りする。
BICにより生み出された数々の成果
多くのプロジェクトが進行中だというBICだが既に各拠点でさまざまな成果が生まれ始めている。事例として、米国では「Workplace of the Future」として展開する新たなオフィス機器の提案を推進。既に4製品を市場投入しているという。働く人の生産性、効率性、協働性などを高めることを目指している。「例えば、モニターにマイクとカメラ、スピーカーなどを搭載し、スケジュールと連動してお知らせをしたり、遠隔会議を支援したりするロボットなどを展開している。これらは近接領域から生まれた製品だといえる」(市村氏)
また、シンガポールのプロジェクトでは、創傷自動測定・観察ソリューションの実証が進んでいるという。従来物理的に測定していた傷口の測定を画像キャプチャーで行うというもの。既存のやり方に比べて15倍の速さで創傷測定ができる他、効果的な創傷観察や治療により病院のコスト削減に貢献するという。
日本でも既にさまざまな製品が生まれ始めている。その1つとして紹介したのがグローバルコミュニケーション「AiLingual」である。これは機械翻訳技術(AI)を活用したマニュアル多言語制作サービスで、管理機能、編集機能、翻訳機能、出力機能などを1つにまとめたものだ。市村氏は「外国人就労者やインバウンド対応などで多言語マニュアルをサクサク作成できる。既に2017年6月に販売を開始しており実証が進んでいる。製造業からの引き合いも多い」と語る。
さらに、2017年7月に新たに発表したのが体臭チェックデバイス「Kunkun body」である。これは臭いの見える化、デジタル化にチャレンジした製品である。製品化に際しても、クラウドファンディングサイト「MAKUAKE」を利用した事業化を進めている。「臭いを消すための消臭市場が爆発的に広がりを見せており、臭いを見える化することでこれらに対しより効果的な手法を訴求できるようになる。臭いで販売機会を逃すことがある中古車販売市場や、マシンの故障検知など、B2CだけでなくB2Bでも活用できると考えている」と市村氏は手応えについて語っている※)。
※)関連記事:見える、見えるぞ、私の体臭が! ニオイの見える化はオープンイノベーションから
BIC発の全社事業「ワークプレイスハブ」
さらにBIC発の全社事業として、幅広い展開が進んでいるのがEU発で生まれた「Workplace Hub(ワークプレイスハブ)」である。これは複合機にサーバ機能やネットワーク機能を持たせたもので、複合機と同じスペースでエッジのIoT基盤として活用することが可能なシステムである。複合機に搭載した「Workplace Hub」の他、ネットワーク機能などエッジコンピューティング機能だけを切り出した「Workplace Edge」、小型デバイスの「Workplace Spoke」などデバイスラインアップなども用意する。狙いとしているのは、エッジ領域でのIoT基盤として自然な形で浸透することである。
市村氏は「コニカミノルタとしてIoT領域への取り組みを進める中でエッジレイヤーで勝負をするということは決めている。IoTでデータを収納するというとクラウドへの注目が集まるが、クラウドは大規模なベンダーが大型投資を既に何年も進めてきており、コニカミノルタが今さら取り組むべき領域ではないと考えている。一方でリアルタイム性やセキュリティの問題など現場には現場で処理しなければいけない情報も多い。その中でワークプレイスハブを中心にエッジ領域でさまざまな機器などをつないでいきたい。上位のクラウドベンダーなどとは随時連携を進めていく」と述べている。
見えないものを見えるようにする価値
「ワークプレイスハブ」などを活用したデジタルマニュファクチャリングの姿なども紹介した。買収なども含めたグループ会社の総合力を生かし、ジャンルトップのハードウェア、ソフトウェア技術を強みとする一方で、エッジデバイスや解析技術などを生かして「見えないものや見たいものを可視化する」というソリューションを提案する。
例えば、カラーマネジメントシステムを活用した塗装の検査や、独自開発したX線非破壊検査技術を活用した検査ソリューションや、3Dレーザーレーダーを活用する人の動きの管理などのソリューションを紹介。これらは2017年4月のドイツのハノーバーメッセなどで紹介したものだという※)。
※)関連記事:コアは画像でIoT基盤で支える、コニカミノルタが描く製造業の姿
「ドイツのインダストリー4.0など、デジタルマニュファクチャリングに対する動きは世界中でさまざまな取り組みが進んでいるが共通するのは『つないでいく』ということだ。それぞれがつながる中でどういう価値を打ち出せるかということを考えた時に、コニカミノルタならではの画像技術などを活用し『見えないものが見える』など独自の価値を訴求した」と市村氏は述べている。
IoT時代のゲームチェンジャーに
「ワークプレイスハブ」によりエッジIoTプラットフォームを構築することで、デジタルマニュファクチャリングだけでなく、さまざまな価値を創出することが可能となる。ただ、単純にIoT基盤としての展開を考えても、対象とする分野が広くなりすぎて事業化が難しくなる。
その点について市村氏は「3つの基準を考えている。1つは効率性を高めることができるかである。データを取得できることで見える化が実現できコスト削減などに貢献できる。もう1つが付加価値である。セキュリティや自動制御化、意思決定支援などの付加機能を活用することで新たな価値を生み出すことができる。そして最後がクリエイティブであるかどうかである。最終的に創造性を感じなければ顧客の心に響かない。そして仮に導入につながったとしても十分に活用されずに効果を得られない。ワクワクするような提案かどうかはそういう意味で非常に重要だ」と述べている。
さらに、日本の製造業はIoTを含む新たな変革の動きに対し、様子を見て後手を踏むケースも多いが「コニカミノルタは、ディスラプター(創造的破壊者)となることを宣言する。そのためにBICなどを設立しさまざまな体制変革を進めてきた。人や場所、国、変動などに依存せず、コア技術とインテリジェンスを組み合わせた革新的な製造業の姿を作り出していきたい」と市村氏は抱負を述べている。
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