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IoTが変える「製造業の在り方」、「ダントツ」の根幹には何があるのかMONOist IoT Forum 東京(前編)(1/2 ページ)

MONOistを含むITmediaの産業向け5メディアは、セミナー「MONOist IoT Forum IoTがもたらす製造業の革新 〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜」を開催。同セミナーのレポートを前後編でお送りする。

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≫MONOist IoT Forum記事

 MONOist、EE Times Japan、EDN Japan、スマートジャパン、TechFactoryなどの産業向け5メディアは2016年12月7日、東京都内でセミナー「MONOist IoT Forum IoTがもたらす製造業の革新 〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜」を開催した。「つながる工場」「つながる技術」「つながるサービス」の3つの切り口で各業界の先駆者たちが、「それぞれのIoT」について紹介した※)。同セミナーのレポートを前後編でお送りする。

※)関連記事:総力特集「IoTがもたらす製造業の革新」

 前編では、基調講演に登壇した小松製作所(コマツ)の取締役 専務執行役員で、ICTソリューション本部長の黒本和憲氏と、特別講演に登壇したデンソーのDP-Factory IoT革新室長の加藤充氏の講演内容をお伝えする。

顧客志向で競争軸が変化

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小松製作所の取締役 専務執行役員で、ICTソリューション本部長の黒本和憲氏

 IoTの先駆者とも見られるコマツだがその背景には何があったのだろうか。黒本氏は「建設機械は生産財である。ただ、同じ生産財である工場機械と比べると使われる場所が屋外で不特定であり、使われ方が多岐にわたる。そのため自動化やシステム化が遅れている状況があった。これをM2M(Machine to Machine)を使うことで改善したいという狙いがあった」と述べている。

 そこで、開発されたのがコマツ機械稼働管理システム「KOMTRAX」である。KOMTRAXは建設機械から自動で情報を収集し、遠隔での車両稼働の監視、管理、分析を可能にするべくコマツが開発した仕組みである。日本では2001年から標準装着を開始し、2006年からグローバル展開を進めている。現在は世界中の42万台の建設機械がKOMTRAX付きで稼働しているという。

 KOMTRAXの端末は、通信モデムとGPSアンテナを搭載したシンプルなもので基本的には建機内の設置されたセンサーの情報を車両内のCANネットワークを通じて収集する。位置情報と車両内のエンジンやポンプの稼働状況を組み合わせてデータ化し、通信衛星回線や携帯電話回線を通じてデータを収集する。これらを分析サーバで分析しBIツールなどを通じて表示する。こうした状況はWeb経由で、顧客や代理店などとリアルタイムで共有可能となっている。

 建設機械は生産財であるため、トータルライフサイクルコストは車両価格であるイニシャルコストと、保守費用や燃料費用、オペレーションの工賃などの運用コストで構成される。KOMTRAXを活用することで、稼働状況が見える化でき、運用コストを抑えるような使い方ができるため、顧客メリットを提供できるという仕組みである。

施工を高度化する「ダントツソリューション」

 こうした取り組みから、あらためてコマツでは商品戦略として「顧客価値」を基準とした商品戦略を明確化。まず機械単体での高品質化を追求する「ダントツ商品」だけでなく、KOMTRAXを中心としたバリューチェーンサービスに目を向けた「ダントツサービス」への進化を実現した。そして現在取り組んでいるのが、顧客メリットを焦点とし施工高度化による顧客価値創造を目指した「ダントツソリューション」への進化である。

 「製造業としてモノの価値を追求していくという基本は変わらない。しかし、顧客価値を考えた場合、モノだけでは十分ではない。サービスやソリューションなどへと発展させていくことが必要になる」と黒本氏は述べている。

 「ダントツソリューション」として象徴的なのが「スマートコンストラクション」である。「スマートコンストラクション」は、ICT(情報通信技術)を活用して建設現場の情報を連携し、安全で生産性の高い現場を実現するとともに、蓄積されたデータを新たなサービスに活用するというもの。ドローンなどを活用した「高精度測量」、2次元データを3次元に変換する「施工完成図面の3次元化」、土質や地下の埋設物など「変動要因の調査・解析」、施工計画シミュレーションによる「施工計画の作成」、ICT建機などによる「知能化された施工」、データ蓄積による「完工後の施工データ活用」という6つの技術連携および情報連携で実現する。

 「例えば、ドローンによる精密測量と施工シミュレーションなどを組み合わせるだけで土量の算出なども非常に容易になり、切土量と盛土量を最適に均衡させ、新たな土の運搬を減らすようなことが可能となる。また鉱山現場などではもっと進んでおり、AHS(無人ダンプトラック運行システム)などを活用し、自動化を進めることができている。このようにICTを最適に活用することで施工現場の自動化やシステム化を実現でき、顧客価値を生み出すことができる」と黒本氏は述べる。

コマツが考える技術よりも大切なもの

 一方でコマツでは製造業としての役割が広がりを見せる中で重要になるものとしてブランドマネジメントを挙げている。「コマツでは、コマツの強みや心構え、行動基準などを明文化した『コマツウェイ』を作ってきたが、あらためてブランドマネジメント編を作成。マーケティングの強調点が『取引』から『関係性』へと変化する中、ブランドマネジメントを『コマツでないと困る』とした」と黒本氏は述べる。

 そして、こうした顧客との関係性を築いていく上で、代理店の役割の転換が重要になるため「顧客関係性相関チャート」や「顧客関係性7段階モデル」などを活用し、代理店の意識改革を推進している。黒本氏は「代理店の意識そのものを、機械から顧客へシフトしていくことが必要だ。最終的には顧客がコマツなしでは事業が成り立たないというようなともに成長していくような関係性を築くことを目指している」と述べている※)

※)関連記事:加速するコマツのIoT戦略、「顧客志向」が成功の源泉に

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