スマート工場化が加速した2016年、EtherCAT対応やFIELD systemなどに注目:FA 年間ランキング2016(1/2 ページ)
2016年に公開したMONOist FAフォーラムの記事をランキング形式で振り返る。公開記事の1年間分のデータを集計した上位記事とそこから見えるFA業界の状況について紹介する。トップ10を占めたのは全て、IoTを活用したスマート工場に関連する記事となり、1年の動きをまさに象徴する結果となった。
製造機械およびFA業界にとって2016年はまさに大きな転換が具体的な形になった1年となったのではないでしょうか。2014年から注目を集めてきたインダストリー4.0などの概念が、現実のものへと降りてきて製造業各社が実証実験や実際の活用へと踏み出してきています。2016年のMONOist FAフォーラムもそれを象徴する「スマート工場」の1本足打法というような結果となりました。FAフォーラムで2016年に公開された記事の年間PVの上位記事とそこから見えるFA業界のトピックについて紹介します。
第1位:トヨタが工場内ネットワークでEtherCATを全面採用、サプライヤーにも対応要請
2016年に公開した記事で最も多く読まれたのは「トヨタが工場内ネットワークでEtherCATを全面採用、サプライヤーにも対応要請」となりました。EtherCATはドイツのベッコフオートメーション(Beckhoff Automation、以下ベッコフ)が開発した、イーサネット(Ethernet)と互換性のあるオープンなフィールドネットワークです。現在は2003年に設立されたETGにより、機能要件や認証手順などが規定・管理されています※)。
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トヨタ自動車(以下、トヨタ)では従来、日本電機工業会(JEMA)が推進するオープンフィールドネットワークの「FL-net(エフ・エル・ネット)※)」を中心として活用してきました。しかし「日本であるとかドイツであるとかではなく、良い技術を採用して使い、良い製品や良い社会を作ることがメーカーとしての役割だ。新しい技術を積極的に採用することで競争力を強化していく」(トヨタの先進技術開発カンパニー 工程改善部長の大倉守彦氏)ことを決めたのです。
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工場内にもオープン化やネットワーク化の波が訪れる、スマート工場化に向けて日本企業も本格的に動き出したことを象徴した動きだったと感じています。
第2位:第4次産業革命、2030年に日本の製造業が“あるべき姿”とは?
第2位には、安倍政権における成長戦略の一端を担う「ロボット新戦略」実現を担う「ロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)」の中間取りまとめを紹介する「第4次産業革命、2030年に日本の製造業が“あるべき姿”とは?」がランクインしました。
ロボット革命イニシアティブ協議会は2015年5月に始動し、2016年は活動が本格化した1年となります。3つのワーキンググループ(WG)での活動を推進していますが特に製造業のビジネス変革に関係が深いのが「IoTによる製造ビジネス変革WG」です。同中間取りまとめでは2030年に製造業にとってあるべき姿を5つのポイントで紹介。さらにこれを実現するために乗り越えなければならない6つの課題について紹介しました。
RRIでは2016年は国際協力などを積極的に推進したことも印象的でした。2016年4月にはドイツ連邦政府と日本政府の第4次産業革命に関する連携が発表されましたが、合せてRRIとドイツの「プラットフォーム インダストリー4.0」の連携も発表されました。標準化※)や中小企業同士の連携など既に多くの活動が本格化しています。
※)関連記事:インダストリー4.0を巡る国際標準化の動きはどうなっているのか
2017年は、日本がパートナーカントリーを務めるCeBITや、ドイツで開催されるG20などもありますので、さらに具体的な動きや成果が実現されるかもしれません。
第3位:ジェイテクト香川工場が挑むIoT活用、生産効率はどこまで高められるのか
第3位にはIoTを活用したスマート工場実現に向けて、先進的な取り組みを進めるジェイテクトの香川工場の事例記事「ジェイテクト香川工場が挑むIoT活用、生産効率はどこまで高められるのか」がランクインしました。
ジェイテクトではIoTを、IoE(Internet of Everything)として推進しています。これはモノ(Things)だけでなく、人も含めたいという意思を示すものです。2016年に開催された「第28回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2016)」ではこの香川工場を含むIoEの実証の成果について、映像での紹介を中心とした異色の展示を行い、業界関係者に驚きを与えました※)。
※)関連記事:あえて実機は置かない、ジェイテクトが振り切った「IoE」の世界
ジェイテクトはトヨタの生産ラインにおけるラインビルダーの役割も担っており、基盤となるPLC「TOYOPUCシリーズ」などを含め、理想の工場の姿に向けて着々と布石を打っている様子を示したといえます。
第4〜10位については、以下のランキング表から記事内容を確認していただければと思います。
MONOistFA2016年記事ランキングトップ10
- トヨタが工場内ネットワークでEtherCATを全面採用、サプライヤーにも対応要請
- 第4次産業革命、2030年に日本の製造業が“あるべき姿”とは?
- ジェイテクト香川工場が挑むIoT活用、生産効率はどこまで高められるのか
- 三菱電機が第4次産業革命で変えること、変えないこと
- 日本の製造業が「IoTで遅れている」と指摘される理由
- 製造業IoTに新たなデファクト誕生か、ファナックらが人工知能搭載の情報基盤開発へ
- インダストリー4.0って何でこんなに注目されているの?
- デンソーの「ダントツ工場」は人と志をつなげるIoTを目指す
- インダストリー4.0で具体化した日独連携、競合を越えた「つながる」の価値(後編)
- ファナックがIoT基盤の壮大な実演、JIMTOFで80社250台の工作機械を見える化
次ページでは4位以下の記事で気になった記事と、2016年公開だけに絞らなければどうなったのかという記事についてご紹介しようと思います。
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