あえて実機は置かない、ジェイテクトが振り切った「IoE」の世界:JIMTOF2016
ジェイテクトは「JIMTOF2016」において、あえて工作機械の実機展示点数を大幅に減らし、「IoE」として進めているIoT時代の工作機械や工場のあるべき将来像を紹介。その基盤となるPLC「TOYOPUCシリーズ」などをアピールした。
ジェイテクトは「第28回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2016)」(2016年11月17〜22日、東京ビッグサイト)において、工作機械の実機展示点数を数点にしぼり、「IoE(Internet of Everything)」として進めているIoT(モノのインターネット)時代の工作機械や工場のあるべき将来像を紹介。その基盤となるPLC「TOYOPUCシリーズ」などをアピールした。
「人」の価値を訴求するジェイテクトのIoT
ジェイテクトでは、IoT(Internet of Things)の活用においてあえて「モノ(Things)」だけをつなぐのではなく、人やサービスまでもつなげていくという思いから「IoE(Internet of Everything)」として推進。スマート工場の実現に向けてこの「IoE」を活用したさまざまな取り組みを進めている。
今回は、この「IoEによる新たな価値」を演出するために、実機展示は数台にとどめる一方で、「モーションビジョン」や「テクノロジカルボックス」と呼ぶ映像技術を活用した展示で、「つながる世界」の広がりや実証実験の成果などを紹介したことが特徴である。ジェイテクトでは既に同社の香川工場の他、阪部工業や双葉工業において、このIoEの導入実証などを進めており※)、これらで得られた成果を分かりやすく紹介した。
※)関連記事:ジェイテクト香川工場が挑むIoT活用、生産効率はどこまで高められるのか
基盤となるTOYOPUCシリーズ
これらのIoEの基盤となるのが、同社の展開するPLC「TOYOPUC」シリーズである。今回のJIMTOF2016では、TOYOPUCシリーズの過去の歴史などを紹介。その流れで「つながる工場」の鍵をにぎる製品として、異種通信環境を吸収して情報を吸い上げることを実現する「TOYOPUC-Plus」と、新たに発売したエッジ型解析モジュール「TOYOPUC-AAA」を紹介した。
「TOYOPUC-Plus」は小型のボード型PLCであるが、最大の特徴が異種環境間の違いを吸収する一種のインタフェースの役割を果たすという点である。多彩な通信機能をサポートしており、バッテリーレスでメンテナンスフリーである点などを活用することで、「FL-NET」や「CC-Link」「Ethernet/IP」などの産業用ネットワークで構成された制御装置を一括して結ぶことができる。工場内の情報を一元化するためには、さまざまな工作機器や設備から情報を吸い上げることが必要だが、工場内のこれらの設備は全てバラバラの通信プロトコルやデータセットなどを採用しており、まず「つなげる」ということが難しかった。「TOYOPUC-Plus」はこれらの課題を解決するものとして期待を集めているという。
一方の「TOYOPUC-AAA」は、生産設備に接続しデータ収集や蓄積、解析を行うことができるオープンプラットフォームモジュールである。スマートファクトリーでは、現場領域においてデータの一次処理を行う「エッジコンピューティング」に大きな注目が集まっているが、「TOYOPUC-AAA」はスマート工場におけるエッジコンピューティングの中心となる端末である。
OSとして「Windows Embedded Standard 7」を搭載し、CSVファイルで保存される蓄積データをすぐにデータ加工やグラフ表示できる。また、PCと同様、イーサネットポートとUSBポートをそれぞれ2口用意し、アナログRGB出力も用意しており、豊富なインタフェースで、接続性を確保する。さらに基本機能である蓄積、解析に加え、機械学習のエンジンを搭載し、ニーズに合ったアプリケーションパッケージを今後用意していくとしている。
関連キーワード
Internet of Things | IoT | 工場 | ジェイテクト | JIMTOF | PLC | エッジコンピューティング | FA | オープンプラットフォーム | スマートファクトリー
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ジェイテクト香川工場が挑むIoT活用、生産効率はどこまで高められるのか
自動車のトランスミッションやディファレンシャルギアなどに用いられる円すいころ軸受を生産しているジェイテクトの香川工場。スマート工場を実現するためのIoT活用として位置付ける「IoE(Internet of Everything)」をはじめ、同工場が取り組んでいる生産効率化に向けたさまざま取り組みを紹介しよう。 - FL-NETでも、CC-Linkでも問題なし、異種環境を結べるインタフェース
ジェイテクトは、エレクトロニクス・メカトロニクスの展示会「テクノフロンティア2016」(2016年4月20〜22日、幕張メッセ)において、製造現場におけるIoT活用を実現する技術として、異業種間を結べるインタフェース「TOYOPUC-PLUS」を紹介した。 - インダストリー4.0で具体化した日独連携、競合を越えた「つながる」の価値(後編)
ハノーバーメッセ2016において第10回となる日独経済フォーラムが開催された。テーマは「実践の場におけるインダストリー4.0」とされ、会期中に発表された日独政府の連携なども含めて、日独の協力体制や土台作りに注目が集まった。後編では、日独両国が特に協調が必要だと語った「中小企業の支援」について紹介する。 - 「正確性と冗長性が必須」、ジェイテクトがステアリング開発で自動運転に対応
ジェイテクトが東京都内で開催した記者説明会で、中期経営計画の進捗などについて説明した。同社の主力事業であるステアリングでは、自動車メーカー各社から、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転技術に対応可能なステアリングについての問い合わせが相次いでいるという。 - オムロンの“標高10mのIoT”は製造現場を明るく照らすか(前編)
オムロンは「IoT時代のFA」をテーマに記者会見を開催した。インダストリー4.0などIoTの製造現場での活用が進む中、同社の考えるFAの将来像と戦略、またそれを実践する製造現場などを紹介した。前編では同社の考えるIoT戦略について、後編では製造現場におけるIoTの自社実践の様子についてお伝えする。 - ドイツが描く第4次産業革命「インダストリー4.0」とは?【前編】
「インダストリー4.0(Industrie 4.0)」という言葉をご存じだろうか? 「インダストリー4.0」は、ドイツ政府が産官学の総力を結集しモノづくりの高度化を目指す戦略的プロジェクトだ。インダストリー4.0とは何なのか。同プロジェクトに参画するドイツBeckhoff Automationグループに所属する筆者が解説する。