「正確性と冗長性が必須」、ジェイテクトがステアリング開発で自動運転に対応:自動運転技術
ジェイテクトが東京都内で開催した記者説明会で、中期経営計画の進捗などについて説明した。同社の主力事業であるステアリングでは、自動車メーカー各社から、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転技術に対応可能なステアリングについての問い合わせが相次いでいるという。
ジェイテクトは2015年11月16日、東京都内で記者説明会を開き、2015年度(2016年3月期)の業績や、中期経営計画の進捗などについて説明した。同社社長の安形哲夫氏は「2015年度の業績は第2四半期までの実績、通期予想とも過去最高を更新する勢い。ただし、増益要因はほぼ円安による為替の影響であり、まだ体質改善が必要だ」と強調した。
同社の2015年度第2四半期までの連結業績は、売上高が前年同期比7.1%増の7018億円、営業利益が同20.9%増の403億円、経常利益が同19.4%増の421億円、純利益が同27.6%増の283億円。また2015年度の通期業績予想も上方修正しており、売上高が前年度比4.0%増の1兆4100億円、営業利益が同10.6%増の820億円、経常利益が同7.1%増の850億円、純利益が同24.7%増の530億円となっている。
大幅な増益だが「売価水準ダウンによる減益、売り上げ増+原価改善にいる増益要因はほぼ同額。円安による為替変動の増益が加わっただけ」(安形氏)として、2016年度からは円安効果はないと考え、2019年度を最終年とする中期経営計画を進めて体質改善を加速させる方針を示した。
自動車部品事業の中期目標は「ステアリング世界トップシェアの維持」
同社の主力事業であるステアリングなどの自動車部品事業については、取締役副社長 TQM推進室 自動車部品事業本部長の河上清峯氏が説明した。河上氏は、「油圧式と電動式、両方を合わせたステアリング市場で、当社の世界シェアは25%で圧倒的トップだ。中期経営計画では、この25%の世界シェアの維持が目標になる。ドライブラインについては、四輪駆動車用電子制御カップリングなどトルクコントロールデバイスで世界のリーディングカンパニーへ飛躍させる」と述べる。
ステアリングについては、同社が得意とするコラムアシスト式電動パワーステアリング(C-EPS)から、モーターなどの駆動システムを車軸側に設置する「EPSの下流化」に対応するため、ラックパラレル式EPS(RP-EPS)を新開発するとともに、デュアルピニオン式EPS(DP-EPS)を含めた生産体制の拡充を図る。
特に北米では、米国大手自動車メーカー3社への提案活動を強化することも兼ねて、DP-EPSとRP-EPSの生産を強化する。具体的には、テネシーのJATV(JTEKT AUTOMOTIVE TENNESSEE MORRISTOWN)で倉庫として利用されている第2工場で、2016年からDP-EPS、2017年からRP-EPSを生産する。
2015年9月から量産出荷を始めたメキシコのJAMX(JTEKT AUTOMOTIVE MEXICO)でも、2017年にC-EPSの生産能力を増強した後、2018年にDP-EPSの生産を始める計画だ。
また、自動車メーカー各社が開発を加速させているADAS(先進運転支援システム)や自動運転技術に対応可能なステアリングについて、各社からの問い合わせが相次いでいるという。「自動運転技術は大まかに分けて、目となるセンサー、頭脳となる自動運転の判断機能、そしてその判断を受けてアクチュエータを動かす機能の3つから成る。当社は、このアクチュエータを動かす機能の1つであるステアリングについて、正確性と冗長性を併せ持つシステムを開発し提供しなければならないと考えている。顧客の自動運転技術開発は加速しているが、当社はそれら顧客の要求をきちんとキャッチアップできているだろう」(河上氏)としている。
10周年のイメージキャラクターは市川海老蔵さんに
光洋精工と豊田工機が2006年に合併して生まれたジェイテクトは、2016年に10周年を迎える若い会社だ。ただし、光洋精工の創業から数えると85年、豊田工機は65年で、合計すると150年分の歴史があるという。
創立10周年は「歴史ある若い会社」をコンセプトにキャンペーンを展開する方針。歌舞伎役者の11代目市川海老蔵さんをイメージキャラクターに迎えることも発表した。
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