なぜNECは「製造業×IoT」に全力を振り切れたのか:製造業×IoT キーマンインタビュー(3/3 ページ)
IoTがもたらす革新は、製造業にどういう影響をもたらすのだろうか。ITベンダーでありながら製造業としての立場を持つNECはその強みを生かして早くから製造業のIoT活用を支援する「NEC Industrial IoT」を推進してきた。同活動を推進するNEC 執行役員 松下裕氏に話を聞いた。
NECが描く製造業の理想の姿とは
MONOist 今現状でもさまざまな「ピンチやチャンス」が生まれているとされる一方で、インダストリー4.0などのIoTによる製造業革新の動きは、2020〜2030年までを視野に入れた長期的なものだともされています。NECが考える理想の製造業の姿とはどのような形だと考えますか。
松下氏 現状では1つの工場内を「つなげる」ということに対する関心が高いが、今後は全ての工場を結ぶような世界が広がってくる。さらに企業間を超えてバリューチェーン全体を統合するような動きなども必要になってくるだろう。IoTを使った物流システムの効率化や小売り業との連携なども最終顧客に対するリードタイムを削減し付加価値を高めるためには必要になってくる。2016年の設計・製造ソリューション展(DMS)では、こうした思いを込めて、工場内だけでなく物流システムなど水平レベルでの統合も見据えたシステムの紹介を行った。
さらに「見える化の先」を実現し生産工程のよどみなどをなくすような世界も必要になってくるだろう。NECではものづくり共創プログラムの要素の1つとして「匠」を訴えてきたが、IoTを活用した「デジタル匠」を実現する。一方でこうした取り組みを実現する意味では、全てをつなぎ全てのデータをクラウドに上げるのではなく、工場内でセキュリティ面や速度面などで心配のない状況で対処するような「反射中枢」のような役割が重要になると考えている。
MONOist IoTの世界では、データをどこに持ちどう処理するのかというのはある意味命題のような形になっています。
松下氏 製造業におけるIoTにおいて、どこが本当の価値を生み出すかというと、「反射中枢」を含むエッジコンピューティングの領域と末端のデバイスの間の領域であるとNECでは考えている。そういう意味ではクラウドを「脳」と考えた場合、「脳」でじっくり考えるべき問題なのか、工場内の「反射中枢」で反射的に対応すべき問題なのかというのは、しっかり考える必要がある。NECではこの領域を「Multi-Connectivity領域」と置き、これらに最適な支援を進めていくことで、製造業のIoT革新を支援していく。
この製造業としてのIoT革新を見た場合、NECは製造業としてのノウハウを持つだけでなく革新につながるハードウェアやソフトウェア、ネットワークなどの要素技術を保有している。今後はこれらの提供を進めていく他、「Multi-Connectivity領域」においてプラットフォームとなり得るソリューションなども用意していく方針だ。
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