設計審査の超定番「安全率」をごまかすな!:甚さんの「技術者は材料選択から勝負に出ろ!」(11)(3/3 ページ)
あなたの会社の設計審査で、「安全率」の議論はどんな感じ? その「分母と分子」について、誰も質問しなかったら要注意。
図面読めねぇ、描けねぇ管理職
甚さん! これが言いたかったんですね? 設計審査で、“ダメ管理職”は分母と分子については、まず尋ねない……。
おぉ、そうよ。最近は、「図面読めねぇ、描けねぇ管理職が……」って言いてぇところだな。
甚さんの愚痴に、ちょっとお付き合いしてみましょうか?
日本企業も大変なことになってきたんだぜぃ。この記事の最初の方に出てきた5N企業を中心によぅ、こんな感じだ。
- 図面が読めない、描けない設計管理職の出現
- 特許を書けない、特許公報を読んだことがない設計管理職の出現
- 設計審査ができない設計管理職の出現
- 安全率の単語を知らない設計管理職の出現
- 検図ができない設計管理職の出現
コリャ、ちょっと末期症状じゃーねぇかい?
日本企業の経営不振が、「東日本大震災」「タイの洪水」「円高」の影響であると言い訳する経営者をよく見ますが、本当にそうでしょうか?
僕たちの将来は一体、どうなってしまうのでしょうか? いま、僕が興味のある商品も、アップル製とサムスン製です……。
それは、オメェたちがどうにかするんだぜぃ!
これまでのおさらい
良君、これでよく分かっただろう! どこの企業でも、設計審査における定番の質問は、「安全率」だぁ。分母と分子について全く質問しねぇ管理職だけにはなるなっ!
甚さん! 安心してください。ウチの会社に設計審査はありませんから! 検図もありません!
おぉ、そうかいそうかい! それは良かった。
――って、オイッ! そんな会社、さっさと辞めちまえっ!
最後に、また甚さんの悪い口グセが出てしまいました。困ったものです……。
これまでの内容を総括して、本連載『甚さんの「技術者は材料選択から勝負に出ろ!」』を終わるとしましょう。
寿司(すし)屋も技術屋も職人なら、「目利き力」が必要:第1回で解説済み
「目利き力」とは
- 比重(Q):第2回で解説済み
- 縦弾性係数(Q):第2回で解説済み
- 横弾性係数(Q):第2回で解説済み
- 線膨張係数(Q):第3回で解説済み
- ポアソン比(Q):第3回で解説済み
- 熱伝導率(Q):第6回で解説済み
- 比電気抵抗とIACS(Q):第6回で解説済み
- 標準材料サイズ(QCD):第7回で解説済み
- 引張り強さ(Q):第8回で解説済み
- 降伏点/疲れ強さ/0.2%耐力/ばね限界値(Q):第8回と第9回で解説済み
- 特徴/用途(QCD):第10回で解説済み
- コスト係数(C):第10回で解説済み
- 入手性(D):第10回で解説済み
第11回は、Qに関する総まとめにふさわしい、そして、設計審査の定番である「安全率」で締めくくりました。
ただいま「甚さん」シリーズの新連載を準備中です。お楽しみに。
Profile
國井 良昌(くにい よしまさ)
技術士(機械部門:機械設計/設計工学)。日本技術士会 機械部会 幹事、埼玉県技術士会 幹事。日本設計工学会 会員。横浜国立大学 大学院工学研究院 非常勤講師。首都大学東京 大学院理工学研究科 非常勤講師。
1978年、横浜国立大学 工学部 機械工学科卒業。日立および、富士ゼロックスの高速レーザプリンタの設計に従事。富士ゼロックスでは、設計プロセス改革や設計審査長も務めた。1999年より、國井技術士設計事務所として、設計コンサルタント、セミナー講師、大学非常勤講師としても活躍中。Webでは「システム工学設計法講座」を公開。著書に「ついてきなぁ!加工知識と設計見積り力で『即戦力』」(日刊工業新聞社)と「ついてきなぁ! 『設計書ワザ』で勝負する技術者となれ!」(日刊工業新聞社)がある。
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