機械設計を制す! 樹脂部品マスターへの近道はこれだ:甚さんの「技術者は材料選択から勝負に出ろ!」(10)(1/3 ページ)
自動車も家電化してきたいまの時代に必要なのは、“学校では教わらない”樹脂部品の設計力。今回は、その“習得の近道”について解説する。
当連載の登場人物
根川 甚八(ねがわ じんぱち)
根川製作所 代表取締役社長。団塊世代の大田区系オヤジ技術屋。通称、甚さん
国木田良太(くにきだ りょうた)
ADO製作所 PC事業部 設計2課 勤務。80年代生のイマドキな若者。機構設計者。通称、良君
日本は、それに気が付くのが遅過ぎた……
甚さんから繰り返し教えてもらいましたが、EV(電気自動車)が家電品になるんですね! 前回の「EVの部品点数分析」では、樹脂の占有率が「32.1%」で急上昇! この記事のテーマ「樹脂部品設計の習得」にふさわしいですね。
EVといってもよぉ、先進の充電技術や高性能モータだけで勝負する訳じゃねぇ。技術力というものの根底は、材料が決め手になる。やっぱぁ、技術の職人はよぉ、材料の「目利き力」で勝負ってもんよ。
てぇことは、甚さん!(……あれっ、江戸弁が!?)……EVは樹脂で決まるといっても過言ではないですね。
おぉ、そうよ! これからは、「樹脂部品の設計が機械設計を制す!」――そんな時代だぁ!
てぇことは、甚さん! 家電メーカーのEVもデビューするかもしれませんね。まるで、ビデオカメラやデジカメのように……。カメラ屋ではなく、家電メーカーからはガンガン、デジカメが出ちまったようにね(……あれっ、また江戸弁が)。
家電と言えばよぉ、日本の家電メーカーは元気がねぇよなぁ? あん? 先月発表の日本の家電メーカーの損失額を足し算すると、隣国巨大電子企業の利益となるって知ってかぁ? オレサマの個人的な見解だがよぉ。
なるほど……。日本のA社が7800億、B社が2900億、C社が2000億で足し算すると1兆2900億円の損失ですね。隣国の巨大電子企業の黒字が1兆円。
日本のメーカーたちは「東日本大震災の影響が」「円高が」「タイの洪水が」とよく言い訳しているが、本当にそうかぁ? オレサマはよぉ、そこに「欲しいモノがない」からだと思うんだが。
そうですかねぇ。それはちょっと言い過ぎでは……。あ、そういえば、エリカちゃんもボクもスマホは、韓国製です。カッコイイし、軽いし、すごく使いやすいです。
実は、日本製の携帯電話衰退について、「甚さんの設計分析大特訓(3)零戦の要求仕様の優先順位を考えようじゃねぇかい!」の中で、既に予測していました。
そして、世界の名戦闘機、「零戦(ゼロ戦)」――兵器を事例として出すなんて“ご法度”でしょうが、どうか大目に見てください。零戦のような名戦闘機を誕生させたかつての技術力を有していた我が国も、その技術者達がこの世を去った後に残したものは、特徴なき「なんでもあり!」の商品群でした。そして、それに気が付くのが遅過ぎました。
樹脂材料の変身度
おおっとぉ! 諦めるのはまだ早いぜぃ! 日本だってよぉ、たまには技術の方向性を誤るときだってあらーなぁ。嘆くばかりでは進歩はねぇってもんよ。これから、はい上がればいい! そうだろ、良君?
あざーっす! これからは、ボクらが挽回する番です。でも、甚さん、ガッツリ指導してくださいね。
そんじゃ、早速、これを見ろ!
「樹脂設計が機械設計を制す!」。そして、表1を見てください。
「変身度」が設計の難易度を表しています。
樹脂の状態変化(変身)は、
固体⇒流動体⇒固体
という具合に大きく変身します。従って、設計も製造も、樹脂材料に関する「変身ごとの得手・不得手」を熟知する必要があります。
ちょ、ちょっと待ってください。板金も切削部品も設計できない僕に、超難関である樹脂部品の設計ができるんですか?
そんな弱気なことを言うからオメェはよぉ……。
あーあー、まーた「3次元モデラー」「図面読めねぇ、描けねぇ、院卒」「CAEキー坊」って言いますかー? あーハイハイ、そうですねー!!
そんなことユってねぇだろがぁ、あん? こっちだって、ちったぁ気ぃ〜使ってんのよぉ。「樹脂設計が機械設計を制す!」といってもよぉ、実はそんなには難しくねぇんだ! まずはこれから順番に復習しろ! これは命令だ!
樹脂部品設計の実務習得への近道
- 「連載記事:甚さんの設計サバイバル大特訓」を総復習し、“断面急変探索”のテクニックを完全マスターする
- 本連載の「目利き力」を完全マスターする
- 前回の図6のランキングに基づく材料の特性、つまり、前回の図7を暗記する
- 「射出成形金型ミニチュア模型」を入手し、学習する(入手法は後述)
- 樹脂成形に関するトラブルランキングの上位7つを熟知する
えっ、たったこれだけですか? 院卒の僕なら簡単さぁ!
そうだ。たったこれだけだ。欲張んじゃねぇ。
それでは、図1をじっくり見てみましょう。おそらくこれも、皆さんが見たことがないデータでしょう。
上位7つは今回は全て解説し切れないので、今回はひとまず第1〜3位までを解説しましょう。
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