機械設計を制す! 樹脂部品マスターへの近道はこれだ:甚さんの「技術者は材料選択から勝負に出ろ!」(10)(2/3 ページ)
自動車も家電化してきたいまの時代に必要なのは、“学校では教わらない”樹脂部品の設計力。今回は、その“習得の近道”について解説する。
1.収縮
前ページの表1に示したように、樹脂成形は、
固体(原料)⇒液体⇒固体(製品)
と「変身」を経て完成します。固体(原料)を液体にするには大きな熱エネルギーを必要とします。そして、最終的にはこの大きな熱エネルギーを奪って、固体(製品)になるのですが、この大きなエネルギーが悪さをします。それが、「収縮」です。字のごとく、形状や寸法が「収縮」するトラブルです。
この種のトラブルはよぉ、設計と製造が一緒になって解決するトラブルだぁ。んだから、両者の仲が悪いといつまでも片付かねぇんだ。
えっ、それってうちの会社の悪口ですか? うちの会社の設計部長と製造部長は犬猿の仲で、会議をやる度に大喧嘩(げんか)ですよ。甚さん、どうすればいいんですか?
さっさと転職しろ!
またまた甚さんの悪い口癖が出ました……。ここは華麗にスルーして、解説を続けましょう。
2.アンダーカット
図2に示すように、この部品は図中にY方向上下に型があり、容易に取り出せると思いきや、2箇所の凸部が邪魔して取り出せないことに気付きます。
これを「アンダーカット部」、または単に「アンダーカット」と呼びます。アンダーカット部は、図中のX方向に抜く「スライダー」と呼ぶ型を必要とします。アンダーカットは、筆者としては「単なる検討不足」であり、トラブルとは思いません。しかし実際、出図後の金型設計中に発覚することが多く、開発遅延の一原因になっています。
アンダーカットを容易に理解するにはよぉ、前のページ【樹脂部品設計の実務習得への近道】の4番目だ。部品加工屋のプロトラブズが無料で配布している「射出成形金型ミニチュア模型」がいいんだよ。個人情報を登録する(無料)必要があるけどな。
編集部注:教材入手の際に登録する個人情報は、プロトラブズの営業用データとして使用される可能性があります。また教材そのものに関しては、同社に問い合わせください。
ああ、これなら既に持っていますよ。MONOistのこの記事を読んでいたエリカちゃんから教えてもらいましたから。
オメェよぅ……、それ、部下のエリカちゃんに教わったのかい……。…………まあ、いいけどよぉ。
…………。
3.ソリ
図3に示すのが、「ソリ」です。反っているから「ソリ」と呼びます。原因は、巨大なリブによる「収縮」で1と同じです。
また、図中には「ソリ」を回避する「設計ルール」を記載しました。
筆者注:私の著書「ついてきなぁ! 加工部品設計で3次元CADのプロになる!」(日刊工業新聞社刊)でもう少し詳しい解説をしています。
オメェのレベルならよぉ、樹脂の成形トラブルは、上位3つを押さえりゃ十分だ。そんじゃよぉ、ここまでで学んだ「目利き力」をまとめろ! 分かったら、さっさとやれ。
ガッテン承知!
寿司(すし)屋も技術屋も職人なら、「目利き力」が必要:第1回で解説済み
「目利き力」とは
技術者の4科目と主要3科目とは
今回も前回同様に、樹脂材料を中心に「特徴/用途(QCD)」「コスト係数(C)」「入手性(D)」について学びます。
最近は若年化しましたが、その昔、「お受験」と言えば、有名中学校を受験することから始まりました。その受験科目は、国語、算数、理科、社会、そして2013年からは英語が加わります。なんと、全部で5科目です。
一方、筆者の事務所が提唱する「技術者の4科目と主要3科目」があります。前者が「Q(Quality:品質)」「C(Cost)コスト」「D(Delivery:期日)」「Pa(Patent:特許)であり、主要3科目となれば、Paが抜けて、QCDのたった3科目です。
良君! そんじゃオメェが得意とするCAE担当者としての「技術者の4科目」を言ってみやがれ! いいから、さっさと言え!
キュ……、きゅう……、Q……。あっ、甚さん、Qしかありません……。ごめんなさい、怒鳴らないで……。
べらんめぇ! 「技術者の4科目」で、たったの1科目だとぉ! もういい。やっぱ、オメェは「CAEキー坊」だぁ。うちの会社なら給料は、4分の1だ。役立たずの院卒めがぁーーっ!
ムクァッ! ついにそれを言いましたかーっ! し、しかし、この場合はさすがに僕が悪いか。えっと、絶対に挽回して見せます! ムキーッ!!
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