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機械設計を制す! 樹脂部品マスターへの近道はこれだ甚さんの「技術者は材料選択から勝負に出ろ!」(10)(3/3 ページ)

自動車も家電化してきたいまの時代に必要なのは、“学校では教わらない”樹脂部品の設計力。今回は、その“習得の近道”について解説する。

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 技術者が「技術者の主要3科目」で評価されるなら、材料もその主要3科目で選択します。「目利き力」は13種ありますが、最後の「目利き力」は、材料のQCDを締めくくるのにふさわしい、特徴/用途(QCD)とコスト係数(C)と入手性(D)に関する解説です。

甚

いいかっ、よく聞け! 学校の本や専門書にはよぉ、材料のコストは決して書いてねぇ。そんでもってオメェ、これでオイラみてぇな職人がおまんま食えると思うかってんだぁ? あん? 答えろ、院卒ーっ!


良

……「コストには無関心です!」(キッパリ)と言ったら、以前のようにゲンコツが飛んでくるよな……(小声で)。


良

そうですよね〜甚さん! これでグローバル目指して、入学式を秋にしたってダメダメ! 無駄無駄!


甚

オメェは本当に成長したなぁ。以前、「父親にもぶたれたことないのにっ!」なんて――「鉄腕アトム」だか、「鉄人28号」だか、「8マン」だか、なんのせりふか知らんが――言っていた頃が今や懐かしいぜぃ。


良

……「機動戦士 ガンダム」です。


 本連載の第1〜10回(今回)に掲載された全ての「材料特性表」で、表2に示す黄色の部分が最後の「目利き力」です。特徴と用途は暗記しましょう。特に、用途は連想記憶の源(みなもと)となるでしょう。


表2 材料の特性表
良どや

「連想記憶の源」? あぁ、そうか。せっかく使用頻度の高い順にランキングされた材料を、その「特徴」を覚えるのではなく、「用途」から「連想」して、その「特徴」を理解するんですね!


甚

いんやーまいったぜぃ! オメェはよう、いかにも“受験勉強っぽい”解説については、すんごくさえているよなぁ。そんでもって、どうしていつまでも、「図面描けねぇ、読めねぇ院卒」なんだよぉ? あん?


良

…………。


材料コスト

 次は肝心な材料コストです。

 皆さんの街には、寿司屋、そば・うどん屋、ラーメン屋、弁当屋、居酒屋、美容室、理髪店、大工、工務店といろいろなお店や職業の方々が暮らしています。そして、どの業種も激戦です。

 その誰をとっても、原価(=コスト)を算出せずに定価や値引き率を決めている職業があるでしょうか? 原価計算に必要なものは、人件費、光熱費、減価償却費、そして材料費です。

 材料費を知らない、材料費を知らずに材料を選択する、そして、材料費に興味がない――これが多くの日本人技術者にみられる脆弱性です。従って「設計審査ができない」ではなく、「設計審査に臨めない」という状況です。


 気が付けば、PC、液晶テレビ、スマートフォン、携帯オーディオ機器、白物家電、デジタル複写機など、あっと言うまに隣国の巨大企業にその首位を奪われました。

 「日本人技術者のコスト意識」については、本連載の第8回「もっと高めろコスト意識! これだけ覚えろ材料特性!」でも解説しました。ぜひもう一度、読んでみてください。

甚

べらんめぇ! コレキシのことでクヨクヨすんなって! コスト知識なら、すぐに挽回できる。問題はやる気があるかないかだ。ところで、良君! 10円玉持ってっか?


良

10円玉ならありますよ。はい、どうぞ。


甚

例えば、その10円玉を作るとしたら、ある材料からプレスするがよぉ、無駄な部分もあるだろう。いま、無駄な材料が発生しないとしたとき、その10円玉の材料費はいくらだ?


編集部注:

  • 通貨の模造は、「通貨及証券模造取締法」で禁じられています。
  • 通貨のサイズは筆者の計測値で、公式寸法に基づいていません。


良

ガッテン承知! この手の問題なら得意中の得意!(図4)



図4 10円玉などの材料費算出:材料費=体積(mm3)×コスト係数
甚

良君の計算だと、アルミ製の1円玉を作ると赤字だな。最近、流通している1円玉の数が少なくなったと思うんだが、それも理由かもしれねぇなぁ。もちろん、ほかにも理由はあるだろうがよぉ……。


良

あー、そういえば最近、「1円玉が不足して困ってるのヨ〜オ」って、コンビニのオバ……オネェサマも言っていたなぁ。


材料の期日

良

ところで甚さん! 「D(Delivery:期日)」の解説は?


甚

そりゃ〜簡単だぜぃ! 第1〜10回(今回)まで、各種の材料特性をその使用頻度順に教えたからよう、全ての材料のDは「優良」ってことだ! 安心しろ!


良

あっ、なるほど! だから使用頻度順にランキングしたんですね。さすが、甚さん! 今回も、ありがとうございました。


甚

オメェは、「よくなった!」と思ったら、すーぐ“使えない頭でっかち”に戻っちまうからよぅ、気ぃ抜くなよ!




 次回は、曲者(くせもの)の安全率について解説します。お楽しみに! (次回に続く)



Profile

國井 良昌(くにい よしまさ)

技術士(機械部門:機械設計/設計工学)。日本技術士会 機械部会 幹事、埼玉県技術士会 幹事。日本設計工学会 会員。横浜国立大学 大学院工学研究院 非常勤講師。首都大学東京 大学院理工学研究科 非常勤講師。

1978年、横浜国立大学 工学部 機械工学科卒業。日立および、富士ゼロックスの高速レーザプリンタの設計に従事。富士ゼロックスでは、設計プロセス改革や設計審査長も務めた。1999年より、國井技術士設計事務所として、設計コンサルタント、セミナー講師、大学非常勤講師としても活躍中。Webでは「システム工学設計法講座」を公開。著書に「ついてきなぁ!加工知識と設計見積り力で『即戦力』」(日刊工業新聞社)と「ついてきなぁ! 『設計書ワザ』で勝負する技術者となれ!」(日刊工業新聞社)がある。



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