実務で使う場合の線膨張係数とポアソン比:甚さんの「技術者は材料選択から勝負に出ろ!」(3)(1/4 ページ)
今回は、線膨張係数とポアソン比について例題を解きながら解説。学問としての知識から実務へ役立てるにはどうしたらいい?
当連載の登場人物
根川 甚八(ねがわ じんぱち)
根川製作所 代表取締役社長。団塊世代の大田区系オヤジ技術屋。通称、甚さん
国木田良太(くにきだ りょうた)
ADO製作所 PC事業部 設計2課 勤務。80年代生のイマドキな若者。機構設計者。通称、良君
編集部注* 本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。
そんじゃ良君、ここまでで解説済みの「目利き力」と、今回説明する「目利き力」をまとめるぜぃ。
しかし、応力計算の全てを縦弾性係数(E)で計算してしまうなんて、驚きでした。しかも、その理由が、「横弾性係数(G)の存在を知らなかったから」とは!! これが日本の技術力なんですかね……。
そう断定的に言うな! 分からないなら、分からないでいい。知らないなら、知らないでいい。問題は、それをどう発見し、本人に伝えるかだよなぁ。それにしても、「なでしこJAPAN」は職人よぉ!
実は、簡単なことなんです。
それは、“設計書を審査する”、つまり設計審査の実行です。基本に戻ればいいんです。いま、日本企業の多くは設計書がなく、設計審査が“審査物のない技術説明会の「場」”になっています。従って、設計プロセスの是非を診断できない仕組みを作ってしまったのです。設計書がない日本企業の、全ての設計プロセスが「ブラックボックス」で、「手抜きの設計フロー」になってしまいました。
参考情報:甚さんの設計分析大特訓(1) | |
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⇒ | 灯油ポンプの設計書を書こうじゃねぇかい! |
メーカーの社告・リコール、そしてあの大災害からの復興など、さまざまな問題がニュースで流れてきます。そういった問題に対し、筆者は設計書の開示を提案しています。特に知りたいのは、想定値に対する安全率、その分母と分子の値であり、それを開示すべきではないでしょうか?
なるほど、うちの会社もそうです。設計審査=技術説明会です。ですから、「承認」ばかりで、決して「却下」や「再審査」の用語が議事録の中にありません。少しずつ変えていかなくてはなりませんよね。
それでは、「目利き力」アップの継続から行きましょう。今回の「目利き力」は、「線膨張係数」と「ポアソン比」です。線膨張係数は、高校1年の物理で学びます。簡単ですから、いきなり例題を解いてみましょう。その方が早いです(※解答は、次のページ冒頭にあります)。
例題
材料がSUS304(ステンレス材)で、長さ510mmの棒がある。いま、環境温度が15℃から38℃に上昇した場合、その伸びを計算しなさい。
高校生のときの大学受験勉強を思い出しますね。次は、工業高校や高専や大学の1年で学ぶ「ポアソン比」についてです。これは、甚さんよりはるかに僕の方が詳しいので解説しますね。
実務でも、これぐらい自信があればよぉ、オメェもよぉ……。
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