実務で使う場合の線膨張係数とポアソン比:甚さんの「技術者は材料選択から勝負に出ろ!」(3)(2/4 ページ)
今回は、線膨張係数とポアソン比について例題を解きながら解説。学問としての知識から実務へ役立てるにはどうしたらいい?
前ページ問題の解答
SUS304の場合、図1に記載される線膨張係数は、17.3×10−6/℃であるから、
伸びλ=17.3×10−6×510×(38−15)=0.20mm
となる。
図2を参照して、ポアソン比を説明します。
軸方向に力(W)で引っ張ったとき、軸方向の伸び、つまり、縦ひずみ(λ/2×2=λ)が発生します。伸びた部分があるということは、縮む(圧縮)部分もあるわけで、それが、図中のdからd1へ縮む(圧縮)、つまり、横ひずみ(δ/2×2=δ)が発生します。
そして、縦ひずみの「比」と横ひずみの「比」の比率を下記のポアソン比と呼びます。
- 縦ひずみの比:ε=λ/L
- 横ひずみの比:ε1=δ/d
- ポアソン比:ν=ε1/ε
ところでよぉ、良君! ポアソン比とはどんなとき使うんでぇ? あん? やさしく教えておくんなよ!
教科書には、何も書いてありません。僕が言うのもなんですが、ポアソン比とは、材料選択の「目利き力」の1つです。なぜかと言えば、CAEをかけるときの入力値であり、CAEでは不可欠の材料特性値です。
ポアソン比とは、縦弾性係数や横弾性係数と同じ「係数」です。
係数とは計算するときに必要な「係数」です。何を計算するかと言えば、例えば、外力に対する部品の変形状態をコンピュータで計算するときの「係数」です。
実務としての回答なら、これで十分です。
この説明によく似たものが、「断面係数:Z」です。
図3は、「材料力学」もしくは、「材料工学」では必ず出てくる「片持ち梁(はり)のたわみ」の例題です。
これを電卓で計算するには、材料の縦弾性係数(E)や断面2次モーメント(I)や断面係数(Z)を求めます。筆者が講習などでこの説明をすると、「断面係数(Z)とは何ですか? どんな意味があるのですか?」という類(たぐい)の質問がよくきます。そのようなとき、「断面係数(Z)とは、たわみを計算するときの単なる係数です」と回答しています。ポアソン比(ν)も断面係数(Z)と同じ、単なる計算のための「係数」です。実務上は、これでよいでしょう。
ホッ! 本当は深ケー意味があるかもしれねぇけどよ、でいぶ、気が楽になっちまったぜぃ。あんがとよ。
次に、少々学問的な角度でポアソン比の意義を解説します。まず、ポアソン比の範囲は以下となります。
- 理論的な範囲:−1≦ν≦0.5
- 実用的な範囲: 0≦ν≦0.5
本連載のコンセプト(=「親切なお料理本を目指す」)に沿って上記の2に絞ると、図4に示す各種の材料事例が提示できます。
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