国産クレーンゲーム「クラウン603」が60年ぶりに復活 当時のタイトーの技術とは:イノベーションのレシピ(1/2 ページ)

タイトーは、タイトーステーションなどを支える技術部隊「TAITO TECH(タイトーテック)」の取り組みと、同組織が修理を行い、60年ぶりに復活した国産クレーンゲーム「クラウン603」を披露した。

» 2026年11月04日 07時30分 公開
[坪田澪樹,MONOist]

 タイトーは2026年10月28日、東京都内でメディア向け説明会を開催し、タイトーステーションなどのアミューズメント(AM)施設を支える技術部隊「TAITO TECH(タイトーテック)」の取り組みと、同組織が修理を行い、60年ぶりに復活した国産クレーンゲーム「クラウン603」を披露した。

会場で披露した「クラウン603」の外観[クリックで拡大]
会場で披露した「クラウン603」が稼働している様子[クリックで再生]

クラウン602を探すプロジェクトを経て発掘された「クラウン603」

 クラウン603の修理が始まったきっかけは、2025年に開始した国産初(同社調べ)のクレーンゲームといわれている「クラウン602」を探すプロジェクトである。同機体は国産クレーンゲームが複数機種発売されたといわれている1965年に開発/発売され、太東貿易(現タイトー)から当時の技術を駆使した画期的な製品として展開されていた。しかし、時代の移り変わりとともにクラウン602の姿はタイトーの記録から消え、現在ではわずかな写真資料が残るのみとなっていた。

「クラウン602」の写真資料[クリックで拡大] 出所:タイトー

 このような背景の中、国内初のクレーンゲーム機発表から60周年という節目をきっかけに、クラウン602を探すプロジェクトが立ち上がった。タイトー 総務部 コーポレート・コミュニケーション課の佐々木いつ子氏は、同プロジェクトについて「もともと社内に残っている資料としては、クラウン602の写真と営業チラシや、40周年の時に作成した資料に数字として書いてあるだけであった。数年前にセガがクレーンゲーム機の機体を展示しているのを見て個人的に探したいと思い、『会社の若い世代にも昔の製品を知ってもらいたい』と会社に相談した。SNSで発信をした結果、4400件以上の情報が集まった」と説明する。

 この捜索プロジェクトではクラウン602と完全一致の機体は見つからなかったが、同機体の特長を色濃く受け継いだ後継機であるクラウン603の所在の特定に至った。同機体が見つかった時の状態は、筐体そのものは現存していたが、長い歳月を経てほこりを被っており、パーツなども錆びていたため、稼働するかは不明だったという。「情報提供のあった筐体を技術部隊と一緒に確認したところ、お金の投入口の違いからクラウン602ではなく、クラウン603だと判断した」(佐々木氏)。

クラウン603の写真資料[クリックで拡大] 出所:タイトー

ACモーターを使用、アームはボールチェーンで動作 復活したクラウン603

 奇跡的に発見されたクラウン603の修復作業は、タイトーの技術部門であるタイトーテックが担当した。部品や配線、筐体の内部を確認し、分解できる箇所を可能な限り分解して、オーバーホールを実施した。タイトー TECH本部 技術サービス部 部長の鈴木俊洋は「最初に確認したのは、電源の配線や電気系統周りである。ここの部分で危険がなく、電気系統にも問題がないと判断し、修復作業に取り組んだ」と語る。

修復までの流れ[クリックで拡大] 出所:タイトー

 電気系統/配線周りについては、経年劣化が進んだ配線および配電回路を安全面/耐久性に配慮して再構築し、コイン投入からプレイ終了までの一連の動作を復元した。併せて、木製のキャビネットやアクリル装飾の傷を修復し、稼働時当初の佇まいとノスタルジックな動作音を復活させた。

クラウン603の側面(左)とクラウン603の内部(右)[クリックで拡大]

 クラウン603の修復は、タイトーテック内でさまざまな機器のリペア(修理)を担当する部隊が在籍する海老名テクニカルセンター(神奈川県海老名市)が担当した。マニュアルなども残っていないため、手探りでの修復作業になったという。「パーツに関しては、発見時に見つかったもう1台のクラウン603と合わせて使える部品を見繕った。錆びている箇所に関してはタイトーテック内で研磨して使えるようにした。新しくパーツを作って流用したりはしていない」と説明する。

 また、機体に使用されているクレーンを動かすモーターには直流ではなく、交流(AC)モーターを使用している。タイトーのスタッフによると「今のクレーンゲーム機などは直流のDCモーターを使用しているが、当時はそういうものはなく、スイッチングレギュレーターもまだ導入されていない時代であった。電圧調整やスピード調整、位置検出など全てがアナログの世界の機械である」という。

クラウン603のメンテナンス用の扉の中の様子。速度調整などはつまみを回して行う[クリックで拡大]

 また、アームの動作には現在主流のワイヤ方式ではなく、ボールチェーンを使用している点も大きな特徴である。「前後に動作する部分はクラッチになっており、モーターが焼き付かないように止まる仕組みになっている。グリスを塗りすぎるとスリップして前後に動作しなくなってしまうため、そこの調整が難しい」(鈴木氏)。

クラウン603のクレーン駆動部分が動いている様子[クリックで再生]
アーム部分(左)とクレーンの駆動部分(右)[クリックで拡大]
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